明治150年企画・井上脩身が書く「ジョセフ・ヒコの明治維新」

「ジョセフ・ヒコの明治維新」

本年はお世話になりました。新しい年は明治維新から150年。
本誌井上編集長が書く渾身の作品がいよいよ春号から登場!ご期待ください!

 

 

 今年の秋号で「リンカーンに会った彦の生涯」のタイトルでジョセフ・ヒコを紹介しました。奴隷解放宣言で有名なアメリカのリンカーン大統領に会ったただ一人の日本人、ヒコは横浜で我が国最初の日本語新聞を発行。その後、長崎で木戸孝允ら維新の立役者にアメリカの政治制度などを語りました。こうしたヒコの人物像をえがいた記事に対し、「ヒコのことは初めて知った。もっと詳しく知りたい」という声がよせられました。
そこで、ヒコの人生をもう一度考えてみました。幕末から明治への時代の変遷のキーワードは「開国」です。鎖国から開国へと大転換されたことによって、政治制度や産業構造、社会環境などあらゆる面で、幕藩体制は根底から揺らぎました。そして、産業革命や市民革命後の欧米の文明が入りこむことによって、産業の近代化、軍事面の強化、教育環境や法律の整備などが急ピッチで進められました。
明治維新とは、鎖国国家の欧米化といえるでしょう。
1850年、13歳のときに水夫として乗り込んだ廻船が暴風に遭い、太平洋上を漂流したことからヒコは数奇な運命をたどります。廻船が難破したもとは大型船を造ることを許されない鎖国政策にあります。甲板もない縦帆1枚の船では、高さ5メートルにもなる荒波を受けてはひとたまりもありません。ヒコの漂流はペリー来航の3年前のことでした・・・。