2018春号《西南戦争と大津事件》編集長 井上脩身

西南戦争と大津事件
―七難七福の人間ドラマ―
1月下旬、10年ぶりに三井寺を訪ねた。1100年余の歴史をもち、国宝の金堂をはじめ10件の国宝と42件の重要文化財がある西日本有数の大寺院。琵琶湖が望める立地に加えて、春は桜、秋は紅葉が境内に満ち、多くの参拝客でにぎわう観光の寺でもある。今回、時期外れに訪問したのは、NHKの大河ドラマ『西郷どん』を見ていて、三井寺の裏山にある「西南戦争記念碑」を思い出したからだ。この碑が大津事件のきっかけになったと私は考えている。大津事件は司法の独立が守られた事件として歴史教科書にも載っているが、この事件の登場人物はことごとく数奇な運命をたどり、悲しい結末を迎える。大津事件を人間ドラマとして見直してみると、「富国強兵」の掛け声の陰にひそむ明治の日本の哀れな一面が浮かびあがるのだ。 “2018春号《西南戦争と大津事件》編集長 井上脩身” の続きを読む