連載童話《のん太とコイナ[天の川]#7》文・画 いのしゅうじ

 ジェットコースターから転落しかかったのん太。コイナがおなかのヒレを使って助けたのはいうまでもありません。

コイナはおばあさんが待つ里の山にむかいます。

途中、高い山がそびえています。雪がたっぷり残っていて、若者たちが春スキーを楽しんでいます。

コイナはスキー場でのん太をおろしました。

のん太はスキーははじめてです。

「初心者コースに行かなきゃ」

とコイナが言ったのに、のん太が、

「せっかく雪山に来たんだ。山らしいところに行きたい」

というので、ベテランむけのコースにつれていきました。

のん太が雪の斜面に降りたったちょうどその時、頂上の近くでグワーッと大きな地響きがおこりました。

雪のかたまりが渦を巻き、雪けむりをあげて、猛スピードで真上からおそってきます。

コイナは万一にそなえていました。あわやというところで、のん太はなだれからのがれることができました。

連載童話《のん太とコイナ[天の川]#6》文・画 いのしゅうじ

「一つ聞いていい?」
「答えられることなら。なんなの?」
「ヨットは風を受けてすすむんだよね。でもコイナちゃんは風がなくてもすすんでる。どうして」
「やだ、わたし泳いでるのよ、空を」
「ぼくには飛んでるとしか思えない、プロペラもないのに」
「うーん、どう説明したらいのかしら」
コイナが頭をかかえながらすすんでいくと、遊園地が見えてきました。ジェットコースターのゴーッという大きな音がひびいてきます。
「そうだ、あれよ」
ジェットコースターは高い位置まで引き上げられて、急坂を下るいきおいにのって走り、回転していきます。
「その原理と同じよ、たぶん」
「ぼくジェットコースターに乗ったことない」
コイナはのん太を、あいてる席にすわらせました。安全ベルトをしていません。コースターが宙がえりしました。
真っさかさまに落ちるのん太……。

連載童話《のん太とコイナ[天の川]#5》文・画 いのしゅうじ

のん太が目をさますと、のどかな海が広がっています。
たくさんのヨットが、帆をふくらませて波を切っています。
「ヨットっていいなって思うの」
コイナがしんみりといいました。
「風をうけるってことでは、こいのぼりもいっしょ。でもロープにしばりつけられて、自由がないわ。海の上ならどこへでも行けるヨットとおおちがい」
「コイナちゃんこそ、どこへでも行けるじゃないか

「こいのぼりはね、みんなどこへでも行けたの。人間に支配されるまでは」
コイナがむずかしいことを言ったので、のん太は話をかえました。
「ぼく、ヨットに乗ってみたい」
コイナが一そうのヨットにおろしてくれました。たまたま強い風がふいてきて、ヨットが沈みそうなほど傾きました。
ギャー!
コイナがおなかのヒレでのん太を救いあげました。

連載童話《のん太とコイナ[天の川]#4》文・画 いのしゅうじ

「コイナちゃん、どうして川を泳がないの」
「泳ぎたいのよ、ほんとうは。でも、ダムやらなにやらで、見えるのはコンクリートばかり。泳ぐ気がしないわ

「これからどうするの」
「里にもどるの。おばあちゃんが一人でいるんだもの

「空を泳ぐって気もちいいだろうなあ」
「いっしょに行ってみない」
「うん、行く」
のん太はまようことなく、コイナに乗ることにしました。
コイナは空を泳ぐため、おなかを上にむけます。だから、のん太はコイナのおなかにまたがりました。
コイナはけわしい山々が海にせまる、美しいリアス式海岸の上空をスイスイすすみます。
「すっごーい」「うそみたい」「夢だ」
はしゃぎすぎてつかれたのか、のん太はすーっとねむってしまいました。おなかのヒレで、ふとんのようにやさしくつつむコイナです。

連載童話《のん太とコイナ[天の川]#3》文・画 いのしゅうじ

つぎの日の明け方、のん太の部屋の窓がゴトゴトと音をたてています。
目をさましたのん太が窓に目を向けると、こいのぼりが顔をガラスにくっつけ、何かうったえています。
窓をあけると、男の子にいじめられたこいのぼりでした。
「きのうはありがとう」
こいのぼりが言葉をしゃべったので、のん太は目を丸くしました。
「空を泳いでるっていってくれたでしょ。うれしかったわ」
「じゃあ、ほんとうに空を泳いでたんだ」
「うん、川より空がいいの」
こいのぼりは「コイナ」という名の女の子。
山奥の村で暮らしています。町が見たくなりました。アカダ市の上空までやってきたとき、フェスタの係の人につかまり、ロープにつるされたのだそうです。
「フェスタが終わって解放されたので、お礼を言いたくて、まっさきにここにきたの」

連載童話《のん太とコイナ[天の川]#2》文・画 いのしゅうじ

タイコえんそうがひと休みしたとき、男の子のさわぎ声が聞こえてきました。
「コイは川で泳ぐんだろ。お前はさかさじゃないか」
折り紙のかぶとをかぶった二人の男の子が、一ぴきのこいのぼおりを、ものほしおざおでつっついているのです。
たくさんのこいのぼりのうち、ピンクのはだのこいのぼりが、みんなとは反対に、おなかを空にむけています。男の子はひっくりかえそうとしているのです。
のん太はこいのぼりが泣いているように見えました。
いじめにあってる、かわいそう!
のん太は勇敢にも男の子たちの前にたちはだかりました。

「いじめるな」
「川で泳がせるんだ。何が悪い」
「この子は空を泳いでるんだ」
えっ! 男の子はのん太の気迫におされたのか、ものほしざおをほうりなげ、ていぼうのむこうに走っていきました。

連載童話《のん太とコイナ[天の川]#1》文・画 いのしゅうじ

 1)天の川
ここはアカダ川のていぼう。男の子が寝そべっています。
男の子はのん太、小学四年生。ほんとうの名前は則夫。
のん太は学校でいやなことがあると、通学路のアカダ川の橋からていぼうに下り、あおむけになってぼおっと空をながめます。そうしてると、学校でのことを忘れられるのです。
のん太を見て、だれかが「のんびりのん太」とからかいました。それからは、友だちだけでなく、お父さんまで「のん太」とあだ名で呼ぶようになりました。
その父さんのお気に入りはアカダ高校のタイコえんそう。「高校生ばなれのうで」といいます。
こどもの日、アカダ川では毎年「こいのぼりフェスタ」が開かれます。
フェスタの一番の呼びものはアカダ高校のタイコえんそう。
なので、お父さん、お母さん、妹の一家四人で、河原でお弁当を広げるのが、のん太の家のこども日のならわしです。
今年も、家族でフェスタに行きました。千びきのこいのぼりが、気もちよさそうに泳いでいます。

連載コラム・日本の島できごと事典 その104《玉置半右衛門》渡辺幸重

玉置半右衛門(ウィキペディアより)

玉置(たまおき)半右衛門(1838―1910)は、鳥島(伊豆諸島)のアホウドリを捕獲して羽毛布団を生産し、巨万の富を築いたことで知られる八丈島出身の実業家です。大東諸島の開拓にも携わりました。「南洋事業の模範家」と称賛され、「裸一貫で日本の実業界に君臨した」と言われますが、アホウドリを絶滅に導いたり、労働者を搾取したりするなど負の側面も指摘されています。

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写真エッセー《出雲往来#6 完》片山通夫

話は前後する。国生みの神様である伊弉冉は火の神さまを生んだのが原因で亡くなった。この辺りも日本神話の良いところで、至極人間的だ。夫である伊弉諾は妻の亡骸を出雲国と伯伎(伯耆)国の境にある比婆の山に葬ったものの会いたくて仕方がなかった。そして黄泉国を訪れて・・・。その黄泉の国への出入り口が東出雲の揖屋神社の近辺の黄泉平坂(よもつひらさか)残っている。そして揖屋神社は伊弉冉を祀っている。(完)

写真エッセー《出雲往来#5》片山通夫

さてそのスサノオが高天原から降り立ったのには理由がある。ここにもいろいろな物語があるのだが、簡単に言えばスサノオが高天原で暴れすぎて追放されたのである。追放されたスサノオは日本書紀の一書(あるふみ)によると朝鮮半島の新羅に降り立ったと書かれている。また安芸に降り立ったとか…。
結局は出雲に降り立ち先に述べたようにヤマタノオロチを退治してクシナダヒメと結婚した。