Lapiz2017冬号から《 カバーストーリー・だんじりを彫る男 河合申仁さん》:中川眞須良

河合さんは所謂木彫師である。工房を大阪府下岸和田市内の紀州街道沿い(本町)に構える。18歳で同市内の木下賢治氏に23年間にわたって師事した。
岸和田と言えばだんじり祭りが有名だ。だんじりには木彫が欠かせない。師匠の木下氏もだんじりの木彫を手掛けた。もちろん河合さんもだんじりあっての河合さんである。
 少し河合さんの木彫の歴史を紐解く。河合さんの師匠である木下賢治氏の父親もやはり木彫師を目指していた。彼は淡路島で飾磨の流れを汲む木彫に出会い飾磨で学んだ。木彫と飾磨との関係はと言えば、江戸後期頃から続く飾磨の伝統であるというのみである。木下賢治氏の父が岸和田にその技術を伝え、河合さんが木下氏に師事し今に至るというわけで、河合さん訊ねてもその歴史の詳細は定かではない。しかしながら飾磨にはじまった木彫の技は淡路島、そして岸和田とその技術は受け継がれて、岸和田のだんじりにその技術が実を結んだことだけは確かである。
そして河合さんの作品は、だんじりにとどまらず、社寺、地車、太鼓台、櫓、獅子頭など多岐に渡って見ることができる。前述したように河合さんの賢申堂は3年前に岸和田の紀州街道沿いに工房を構えた。
賢申堂、いや、河合さんの「江戸中期以来の飾磨からの木彫の伝統を守り、新しい技法を廃した技法でその魂を受け継ぐ」という強い意思を取材中ずっと感じていたことを付け加えておきたい。