Lapiz2017秋号から《opinion 肩で風切らない右翼たち》:一之瀬明(年金生活者)

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その昔、鶴田浩二や高倉健などが主役のやくざ路線の 映画を見た後の観客は「肩で風を切って」映画館を出てきたものだ。もちろん映画の主人公になったつもりで。映画館の周りにはそんな健さんが大勢いた。勿論そんな瞬間はたちまち現実に戻って善良な市民になる。可愛いものである。
ところで昨今「ネット右翼=ネトウヨ」なる言葉が出 てきた。匿名でインターネットを駆使して、韓国や中国を罵倒し、まじめな議論をせず(できず)にひたすら安倍首相をあがめ奉り、彼を非難する言説には真っ向から「パヨク」とか言って罵るのみである。
こんな「右翼」がはびこっているのも安倍晋三という
政治家が首相に返り咲いたころからではないのかと感じられる。そんな中、共同通信のサイトで何となくすっきりしたインタビュー記事に巡り合ったので、誌面を借りて紹介したい。
記事はの立場から長く日本の変遷を見つめてきた新右翼団体「一水会」顧問の鈴木邦男さんへのインタビューで、2014年6月21日に配信された、いささか古い
記事だが再掲載されていた。
インタビュー冒頭《今の日本に「子どものような稚拙な議論」「国家主義の強制」を見る。そして謙虚さと寛容さを忘れた日本は、歯止めを簡単に越えるのではない
かと危惧する。海外派兵も徴兵制も、そして戦争も。》と鈴木邦男さんの危惧が書かれていた。以下、彼の言葉を転載してゆく。
《私は右だったが、左翼の本も読まされて相手の立場を理解した。ところが、今は対談しても接点を探すのでなく何でもつぶそうとする。瞬間に反応を求められ、立ち止まってじっくり考えたり、沈黙したりすることが許さ
れない》《非武装中立を唱える自由があったが、今はない。中国、韓国になめられるな、やっちまえと威勢のよい人だけが議論し、憲法改正とか防衛強化を言って自分が強くなった気になっている。低い情念での国家との一体化だ。自分の暗い過去に触れたくないように、国家の暗い過去も否定する。従軍慰安婦も南京事件も戦争もなく、人も殺してこなかったのだ、とまで言うかのようだ》
《従軍慰安婦問題でも他の国もやっている、なぜ日本だけ責めるのかと。これは万引少年が『みんながやっているのに、自分だけ捕まえるのか』と怒るのと同じです。この単純さでは海外派兵、徴兵制、戦争―という流れに歯止めが利かない》
《日本を取り戻すとか、熱狂的スローガンの下での憲法改正は危険だ。国のために、表現の自由、結社の自由を制限する、わがまま言うなという国家主義的な性格が強い。集団的自衛権だって、結局は米国の属国になり、自衛隊は傭兵(ようへい)になる。侵略戦争となったイラク戦争に日本は反対できず、駆り出された。自由がなくなるのだ。自由のない自主憲法より、むしろ自由のある押し付け憲法の方が良い》
《今の国民は戦前と違い、情報もあり賢いから間違わないという思い上がりがある。戦争は軍部が国民に押し付けたというが、うそだ。国民のかなりが戦争したかった。
戦争を題材にした映画が好調です。その中で戦争は悪いことだが、人々には勇気、愛があった、とまとめている。しかし、勇気も愛もなく飢餓の中で死んでいった人が圧倒的に多い。》
《日本は戦争をしない、自衛隊は世界に出て行かない、だから世界中も戦争をしないように一緒に頑張ろう』と宣言してもよい。核兵器にしても日本は保有する技術があるが持たない。そのことを憲法に打ち出すべきだが、そんな議論はまったくない》
《日中国交回復の時に、なぜ侵略した国と仲良くするのか、と中国で反対があったが、中国当局は日本では軍部が戦争をしたがり人民は被害者だと説明し乗り越えた。日本にとってはありがたいのだが、靖国にA級戦犯を合祀(ごうし)し政治家も参拝すれば、その説明は崩れる》《戦後長く愛国心は戦争につながると否定された。今は皆が『愛国者』と言う。しかし愛国心には私は国を愛する、だから国も私を愛するはずだといった見返り、おまえたちも国を愛せという他者への強制を求める性格がある。おまえは国を愛していないと誹謗(ひぼう)する材料にもなる。愛国心は強制されたら汚れた義務だ。官製の臭いがする。心を押し付けてはならない。》いかがだろうか。一時は一水会という新右翼団体を立ち上げた人のインタビューである。

このインタビューでは様々なキーワードが含まれている。このキーワードを今後ゆっくりと時間をかけて筆者なりに消化してゆきたい。「非武装中立を唱える自由」が以前はあったと鈴木さんは説く。以前の自民党には高碕達之助や宇都宮徳馬、三木武夫、藤山愛一郎などの穏健派政治家がそれなりの影響力を持っていた。しかし「安倍一強」などと御用マスコミにはやされて、彼らのような政治家は生まれてこないか、表に出て来れないのが今の状況だ。それも情けない話だが。
先の選挙中、国難=北朝鮮の核という図式を執拗に煽 った安倍首相は、選挙が終わるとコロッと国難が去ったようにふるまっている。
ネットでは「おーい、どこ行った?国難よ!」と揶揄されている。こんなのを「恥も外聞も」投げ捨てたというのだろう。長くなるのでこの辺りで終わることとしたい。
最後に読者の皆様にお願いがある。先に述べたいくつ かの鈴木邦男さんの言葉を今一度読み返してもらいたい。そして今の政治家に伝えてほしいものだ。
安倍首相も含めて「国民の前で肩で風を切らない似非右翼」が多すぎる。

編集部註
鈴木 邦男さん:日本の政治活動家、政治団体「一水会」元最高顧問、プロレス評論家、予備校講師。「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」共同代表。清美応援団員。かつては新右翼活動をしていたが、2008 年には自他共に左翼としている。 (ウィキペディア)
生年月日: 1943 年8 月2 日 (74 歳)

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