Lapiz2018Winter 巻頭言 Lapiz編集長 井上脩身

東京電力福島第一原発事故をめぐって業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣の公判で、武藤栄元副社長は「長期評価は信頼性がない」と述べました。長期評価というのは、2002年に政府の地震調査研究推進本部が福島沖でマグニチュード(M)8・2前後の地震が発生する可能性を公表したことをさします。これに基づいて東電の子会社が08年、同原発への津波が「最大15・7メートルに達する」との計算結果をまとめ、武藤氏に報告しました。この数値通りになるなら(実際、東日本大震災による津波は14メートルを超えた)、早急に対策をたてねばなりませんが、武藤氏はその信頼性を否定したのでした。私が不思議に思うのは、仮に信頼しなかったとしても、こうした予測値があるいじょう、なぜ最低限の措置をとらなかったかという点です。非常用電源を津波がこない高台に移しておけば、メルトダウンはおきなかったでしょう。東電トップという超エリートに最悪の事態だけは避けるという、当たり前の庶民感覚がなかったことに、原発問題の本質があるように思います。 “Lapiz2018Winter 巻頭言 Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む