《「安倍=ポチ」論に油断してはならない》:渡辺幸重

―安倍政権を打倒するために―

 

 安倍首相はトランプ大統領の言うことは何でも聞く“ポチ”だと言う話がある。犬のポチには申し訳ないが、確かにF35やイージスアショアなどの兵器を言われるままに爆買いする姿を見ると情けないぐらい“ご主人様”に忠実である。

 だが、安倍首相の本性はかわいいポチの印象で語るほど柔なものではない。私はこのままだと東條英機を凌ぐ恐ろしい存在になるのではないかと思う。日本国民は1日でも早く安倍首相を退陣させないととんでもないことになる、と警鐘を鳴らしたい。

 かなり前の話になるが、あるテレビジャーナリストに聞いた話がある。彼は安倍インタビューでの印象を次のように語った――「安倍は思った以上に骨がある。信念はものすごく固い」。それまで私は、安倍晋三という政治家はお坊ちゃんで世間知らずだと思っていたが、何やら空恐ろしい感覚を覚えた。

 第一次安倍政権のとき安倍は何をしたか思い出してみよう。教育基本法・学校教育法を改正し、憲法改正に向けた国民投票法を制定した。管理された教育で国家主義をたたき込み、平和憲法を戦争ができる憲法に変えることはすでにこのときから組み込まれていたのである。麻生太郎副首相が言う“ナチスのやり方”であろう。

 そもそも安倍の強引な手法は世界に先行する政治手法だった。“安倍的”が世界に蔓延しつつあると指摘した評論家もいた。そしてトランプ大統領が誕生したのである。

 安倍は図らずも病気によって退陣したが、療養中にも彼の元を去らなかった人たちを心の底から信頼していると言っている。それが日本会議に属する政治家に象徴される超タカ派の面々である。彼らの結束力は強く、安倍は彼らを決して裏切らないということだ。

 そして、悪夢の安倍第二次政権が始まった。安倍は一気呵成に突っ走った。秘密保護法や世界で戦争ができる安保法制を制定し、あからさまに憲法改正を主張するようになった。大量の兵器を買い、原発を輸出しようとし、格差を拡大させた。南西諸島の軍事要塞化や韓国への経済制裁・関係悪化はその延長線上にある。

安倍首相は、東アジアの覇権が欲しい“吸血鬼ドラキュラ”

 「安倍=ポチ」論に戻ろう。現在、米中は軍事的にも経済的にも世界の覇権を巡って激しく争っている。私は安倍も世界の覇権を得たいという野望を持っていると思う。しかし、今の日本にそんな力はない。そこで、アジアの地域覇権をねらってアメリカの言うことをきき、中国を押さえ込もうとしているのだろう。大覇権主義を諦め、小覇権(地域覇権)を狙う戦略に変えたということだ。トランプが大統領でなくなっても、中国ににらみをきかす国にしようと考えているに違いない。
 ポチになってアメリカの言うことを聞きながら軍事力を増強し、TPPや経済支援などとからめて東アジアの覇権を狙う。憲法を改正し、戦争ができるほどの軍事力を持ち、アジア諸国を従えさせるための経済援助をするために、日本国内ではますます収奪が強められて格差が広がり、人権無視の管理体制によって国民は“物言えぬ”状態に押し込められるだろう。私には安倍がポチではなく、国民の生き血を吸う“ドラキュラ”に見えるのだ。

 第二次政権成立直後に中国封じ込めをねらって外国を精力的に訪問し、巨額の金をばらまいたことも小覇権欲しさの行動と考えれば腑に落ちる。ロシアのプーチン大統領にすり寄って北方四島の半分を諦めても平和条約を結ぼうとしたり、トランプ大統領の「アメリカ第一」と中国封じ込め政策に沿って日本の軍事力を急速に増強させたり、国内的には国民に知らしめない・文句を言わせない管理体制を作るために教育制度や取り締まり法などを整備しているのも同じ理由による。情報公開法があっても黒塗りの公文書しか公開しないことやドローン規制法で基地(米軍・自衛隊)内を撮影させないなど、やっていることを見ると実にきめ細かい。その徹底ぶりには驚くばかりだ。

 沖縄県民が辺野古新基地建設に反対の意思を何度も表明しているのに、まったく無視して慰霊の日に「平和を誓い」、広島・長崎の被ばく者が核兵器禁止条約への参加を訴えても何の言及もせず「核兵器のない世界の実現」を語る。その空虚な言葉によって国会は無力化してしまった。そこまで鉄面皮になって民主主義を破壊し、憲法改正に押し進むのは、東アジアにおける小覇権を得る目的を果たすという “鉄の意志”をコアな“アベ集団”が共有しているからだろう。側近が失言したり、スキャンダルを起こしたりしても、その共通の目的の前には確信犯的に目をつぶるのだ(そもそも安倍自身が同じようなことをしている)。
 
内閣支持率を下げる国民的運動を

 安倍首相および彼を支持する集団がポチ集団ではなく、恐ろしいドラキュラ集団だとしたら、我々は何をするべきだろうか。
 選挙でアベ集団を追い落とすこと――それが普通の回答だろう。だが、先の参議院選挙でもわかるように、国民の政治意識はそこまで高まっていない。
 香港の雨傘デモや韓国のローソクデモのように直接的な大衆デモで退陣に追い込む――福島第一原発事故の後、10万人の大衆で国会議事堂を取り囲んだが、その力はまだ大きくない。

 当然ながら、選挙などの間接行動、デモのような直接行動は粘り強く続けていくことが必要である。もう一つ挙げるならば「内閣支持率を下げること」を提唱したい。

 どの国のトップリーダーも国民の支持を極端に気にする。そこで安倍内閣の支持率を20%台に下げることを目標に国民的運動を展開するのだ。ネット社会では個人でも大きな力を発揮するこができる。具体的な活動は挙げないが、それぞれができることを考えて欲しい。
 我々が力を発揮するためには、アベ集団の数々の反民主的な言動をしっかりと心にとめ、覇権主義に反対する強い意思を持つことが大事だと思う。ゆめゆめ「ポチはご主人様がいなくなったら困るだろう」とか「病気になって自ら退陣するかも」などという他人任せの考えを持ってはならない。