とりとめのない話「ブラジルの憂鬱」中川眞須良

 2019年1月、ブラジル大統領に就任した「ボルソナーロ」氏(写真)、改革、革新と言えば聞こえは良いが元軍人で強硬派としての名のほうが、とうりがよいようだ。早速就任早々、大プロジェクト構想の一部を発表したまでは良かったが、すぐに各地、各方面からのブーイングの嵐だ。

 その一大政策とは「アマゾン流域(熱帯雨林)大開発プラン」とでも言うべきものである。
 過去半世紀以上にわたり毎年日本の一つの県面積と同じ自然が消え去り、生態系はもちろん、地球規模で環境の激変が進んでいる事実は全世界周知の通りである。

 しかし今回の政策に対し「聖域に無断で立ち入る暴挙だ」とする声明が一部からすぐに発せられ、広がりつつある。
その「聖域」とはもちろんブラジル全土に点在する、いわゆる先住民居住保護地区である。今回の政策は先住民区の一部が開発で消滅していくことは決して初めてではない。
初期の開発としては、北東部のパラ州、さらに東のマラニョン州、そして新しいところでは、中心都市マナウスの南南西、ボリビア国境近くの区域が開発されさらに奥地へと進みつつある。

 先住民区の歴史として1500年のブラジル発見以来侵略し続けられ、その開発のスピードは発見以前全体の約5~8%にまで減少し、過去200年で235部族、約73万人まで激減の記録が残る。そして今回のボルソナーロ政策の一部は今まではほとんど開発に、手がつけられなかった地区までその波が押し寄せる危険をはらんでいるといわれるからだ。

それらの地区、いわゆる「聖域」とされる一部は

1、ブラジル南部 マットグロソ地方(ボリビア国 境近く)
1、ブラジル南部 ホンドニア地方(ボリビア国境近く)
1、マナウス西部 アマゾナス地方 (ペルー国境近く)
  ジュルアー河、ソリモニイス河流域
1、マナウス西部  国立公園内山間部(ペルー国境近く)
1、特に民区が狭く孤立し情報はなく、人口、環境などの  調査不可能(何百年以上現代文明と接してい  ない  と推測)とされている代表民区
 ・「ジャミナワアララ」先住民区
 ・「ジャミナワ」先住民区      などがある。

 現在の先住民区の総数、約80カ所、その多くがブラジル西部アマゾンの奥地、ボリビア・ペルーの国境近くに集中している。民区によっては州政府などあらゆる交渉の場に代表を派遣している民区もあれば外部との関係を一切遮断し、今なお原始的な生活を営んでいると推測できる民区までさまざまだ。さらに河川流域に広がる比較的広域の民区は情報入手が容易だが、国立公園内等に山間部の狭域の民区は情報入手困難とするデータもある。

 2000年にブラジル発見500年を記念して先住民の環境、人権、保護運動などが開催されそれ以降も
1、ブラジル全国司教協議会(cimi)
1、先住民宗教協議会(ブラジル)
1、熱帯雨林保護団体先住民運動(日本)
などをはじめ、世界の数多くの機関、団体が参加しその運動が継続されている。

 営々と築き上げてきた先住民の文化、その文化環境を守りとうそうとする国民、それらの全てを支援しようとする世界の個人・団体のうねり。
これらの集大成はブラジルの、そして南米の、さらには全世界の宝物である。この宝物とブラジル新政府との立場が対峙、対立の方向に向かわないよう祈るばかりだ。
しばらくは「ボルソナーロ」から、目が離せない。