Lapiz2019冬号《編集長が行く》井上脩身編集長

京アニ放火殺人事件現場で犯人像に思いをめぐらす

今年7月に起きた京都アニメーション放火殺人事件の犯行の動機はいまなお定かでない。41歳の容疑者の男性は大きな火傷を負っていて警察の取り調べができていないからだ。だが、その人物像はうすぼんやりではあるが、浮き上がりつつある。京アニ事件が発生したころ、私は関西のある集合住宅で暮らしていた。隣室の40前後の男性が真夜中に物音をたてるので、いつも寝不足だった。近所迷惑なその行動は京アニ事件の容疑者とよく似ており、同事件は他人事と思えなくなった。隣家の男性は私に恨みをいだいていたフシがある。京アニ事件の容疑者は京アニへの恨みをはらそうとしたのだろうか。9月半ば、京都市の事件現場をたずねた。 “Lapiz2019冬号《編集長が行く》井上脩身編集長” の続きを読む

Lapiz2019冬号《東海道・草津宿》井上脩身編集長

和宮の輿が華やかに~3万人の降嫁の列~

10月上旬、京都駅からJR琵琶湖線の電車に乗って彦根方面に向かった。草津あたりで左の窓から比叡山がくっきり見えた。草津から先に行くにしたがって比叡山が遠ざかり、比良山が車窓の景観を占める。ということは、草津はいわば京都の見納めの地ということだ。草津は江戸時代、東海道と中山道の分岐点の宿場として栄えた。京から江戸に下る旅人は、いずれの経路をとるにせよ、草津で比叡山を見つめて都での雅やかな日々を思いめぐらし、これからの長い旅路への不安に心がふさがれるおもいだっただろう。と考えていて、ふと和宮が頭に浮かんだ。第十四代将軍・徳川家茂の御台所になった和宮である。島崎藤村の『夜明け前』に、将軍家に降嫁する和宮一行が馬籠宿を通る様子がえがかれている。和宮は草津から中山道に進んだのだ。和宮は草津で比叡山を見て何を思ったのだろう。私は有吉佐和子の『和宮様御留』(講談社)のページを繰った。 “Lapiz2019冬号《東海道・草津宿》井上脩身編集長” の続きを読む

Lapiz2019冬号《びえんと》井上脩身編集長

令和元年と昭和3年
~共に遠くで軍靴が聞こえる年~

 令和の時代が幕を開けた今年、ラグビーワールドカップでの日本チームの活躍に沸き、来年の東京オリンピックへの期待が高まっている。明るい未来が約束されているかのようだ。そういえるのか。9月24日の毎日新聞夕刊に気になる特集記事が載った。見出しは「今は昭和3年に酷似」とある。昭和3年は西暦でいえば1928年。91年前である。そういえば10月に天皇の即位礼の儀式が行われたが、昭和天皇の即位礼が営まれたのも昭和3年だった。その13年後の1941年に太平洋戦争が始まっている。酷似とは、「戦争前の時代」ということなのであろうか。

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Lapiz2019冬号《巻頭言》井上脩身編集長

 新聞の2段の記事に目が留まりました。見出しは「関電幹部らを告発へ」とあります。記事は、関西電力役員らの金品受領問題で、福井と関西の住民でつくる市民グループ「関電の原発マネー不正還流を告発する会」が、「金品の受け取りは会社法の収賄や特別背任に当たる」として、八木誠前会長ら20人を大阪地検に告発すると表明した(10月25日付毎日新聞)というものです。12月上旬にも告発状の提出を予定しているといいます。告発がなされた場合、検察が起訴に踏み切るかどうかが焦点になるでしょう。

この記事にいう「関電金品受領問題」というのは、9月27日付の同紙で、共同通信の取材として特報されたものです。同日、関電は大阪市の本社で緊急記者会見を開き、岩根茂社長が「関係者に多大の心配と迷惑をかけた」と頭を下げたうえで、高浜原発がある福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(今年3月死去)から役員ら20人が計3億2000万円相当を受け取っていたことを認めました。 “Lapiz2019冬号《巻頭言》井上脩身編集長” の続きを読む