百鬼夜行夜話 006「六道の辻異聞」片山通夫

幽霊子育飴

小野 篁(たかむら)の閻魔庁出仕の話とは別に、「幽霊子育飴」と伝えられる飴を売っている店がある。
なんでも慶長4(1599)年に、鳥辺山(とりべやま:平安時代以前から京の埋葬地となっていた場所)から夜な夜な飴を買いに来る女性がいたという。

幽霊 丸山応挙画

夜ごと一文銭を握りしめて飴を買いに来ていたそうな・・・・。そんなある朝、店の銭函の中を改めてみると樒(しきみ・仏に供える花)が入っていた。不思議に思った店主がその夜に飴を買いに来た女の後をつけた。
もう後はお分かりだと思うが、女は鳥辺山にある墓地の前ですーっと姿を消し、お墓の中から赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。不思議の思った店主は翌日、お寺の住職と一緒にお墓を掘ってみると、中から飴をくわえた赤ん坊が出てきた。女は子供をお墓の中で生んで、飴で育てていたという話。こんな逸話を持った飴はいつしか、だれが言うともなく「幽霊子育飴」と呼ばれてきた。

鳥辺山は平安時代以前から京都の墓地だった。