コラム/日本の島できごと事典《うな太郎》フリージャーナリスト 渡辺幸重

[日本の島できごと事典(その4)]うな太郎

うな太郎の墓 写真はインターネットから

長崎県の南西部・野母半島(長崎半島)の先端近くに樺(かば)島があります。オオウナギの「8代目うな太郎」はそこの古井戸に棲んでいました。残念ながら2011年(平成23年)に推定30歳で死亡しましたが、体長は1.6m1.8mとも)、胴回りは47cm、体重は12.6kgあったそうです。井戸の脇にうな太郎の墓があります。この古井戸は「オオウナギ生息地の北限」として1923年(大正12年)に国の天然記念物に指定されました。しかし和歌山県や徳島県などでもオオウナギが国の天然記念物になっているので、いまでは北限とはいえないようですが、オオウナギは鹿児島県南部以南に生息する熱帯性の生き物なので珍しいといえます。

地元の人や観光客に愛されていた「うな太郎」は6代目までは井戸に通じる地下水脈から入り込んだ個体が名前を引き継いでいましたが、井戸周辺の側溝工事の影響により入り込む隙間がなくなったために7代目からは鹿児島県などから養子を迎えているそうです。

井戸に隣接して観察飼育槽があり、そこには地元出身の「うな次郎」と「うな子」が棲んでおり、いつでも見学できます。私はうな次郎が9代目を継ぐのかと思っていましたが、井戸の水質が悪化していて引っ越しできないからか、まだ9代目襲名の話を聞いていません。

うな太郎は推定で30歳でしたが、オオウナギの寿命は50年以上ともいわれます。なんと、うなぎ蒲焼「美國屋」のWeb20149月)には155歳で死んだスウェーデンのウナギの話が載っていました。ちなみにオオウナギの味はニホンウナギには劣るらしく、食べた人の話ではナマズ系だそうです。