宿場町シリーズ《西国街道・芥川宿 上》文・写真 井上脩身

「七卿落ち」の最初の宿
~仇討ち舞台での不安な一夜~

「七卿落ち」の様子を描いた絵(ウィキペディアより)

私はいま、司馬遼太郎の『翔ぶが如く』を読んでいる。岩倉使節団が欧米視察にでかけた留守政府を預かる公卿、三条実美が頼りない宰相としてえがかれているのが興味深い。三条は幕末、7人の公卿、公家が京から長州に落ち延びたいわゆる「七卿落ち」の一人である。その三条らが京を出立した後、最初の一夜を芥川宿で過ごしたことを最近知った。西国街道の芥川宿は、大阪府高槻市のほぼ中央に位置する。私は実は高槻の出身で、一時、芥川地区で暮らしたことがある。恥ずかしいことに、通勤の道のすぐ近くに芥川宿があったと知ったのは随分後のことだ。この秋の一日、芥川宿をたずねた。そこは江戸文学を彩る二つの仇討ち事件の現場でもあった。 “宿場町シリーズ《西国街道・芥川宿 上》文・写真 井上脩身” の続きを読む

神宿る。《巳の大杉 大村神社》片山通夫

三重県伊賀市の大村神社の公式ページには次の通り記載されている。

「延喜式」(927年)の神名帳に社名が記載されています。神名帳には、当時全国に無数にある神社の中から御由緒が正しく、 かつ朝廷の崇敬の厚い神社が選ばれています。又、それ以前の「三代実録」(901年)に、八六三年に神位が正六位上から一階級昇進し従五位下に叙せられたことの記載があり、 当時からこの地方きっての古社であることがうかがえます。当社の主神、大村の神の御名は、現存する日本最古の書物「古事記」(七一二年)や 「日本書紀」(702年)に「伊許婆夜和気命」「池速別命」とそれぞれ記されています。
ご神木は巳の大杉 表から見るとただの杉ですが、裏に回ると根元に祠があり、巳(蛇)をお祀りしている鳥居がある。 “神宿る。《巳の大杉 大村神社》片山通夫” の続きを読む

《breath of CITY 》北博文

めぐりめく変化する都市光景を一期一会として感じるままに
ファンインダーのフルフレームで切り撮っています。
人間が利便性を探求して作り上げた都市が今や独自に生きる術を得たかのように朝・昼・晩と表情を変えながら人の心を揺さぶりその反応を眺めているかの様な虚実的な都市の空気感を撮らえて行きたいと思っています。

                                                        北博文

とりとめのない話《素数 他》中川眞須良

素数の説明に[1およびその数自身の外に約数を持たない正の整数]とある。
2-3-5-7-11に始まり無限に存在する。
円周率(π)の3.14159”””を無限に極めていこうとする集団があるのと同様、証明可能な最大の素数を探すことを目的とする集団(企業)があるらしい。 “とりとめのない話《素数 他》中川眞須良” の続きを読む

コラム/日本の島できごと事典《水俣病》フリージャーナリスト 渡辺幸重

[日本の島できごと事典(その3)]水俣病

九州島・水俣湾はメチル水銀に汚染され、1958年(昭和33年)8月から1997年(平成9年)10月までの39年間、封鎖されました。汚染魚が外海に出ないように全長4,400mの大型仕切り網で封鎖線を張ったのです。水俣湾の入り口にある恋路島も閉じ込められました。水俣港では大規模な埋め立てでメチル水銀を閉じ込め、浚渫で汚染土をさらいました。 “公害の原点”といわれ、第二水俣病、四日市喘息、イタイイタイ病と並ぶ日本の4大公害病のひとつ・水俣病の一側面です。恋路島は合戦に出陣した薩摩の武将の妻が夫を想って石を積んだと伝わる無人島で、水俣市は恋路島とその周辺海域を水俣の自然再生のシンボルとして自然体験ツアーなどを催していますが、水俣病患者の苦しみはいまでも続いています。 “コラム/日本の島できごと事典《水俣病》フリージャーナリスト 渡辺幸重” の続きを読む

徒然の章《コロナと付き合った一年》中務敦行

修学旅行や遠足の子供たちで賑っていた東大寺

今年はコロナで明け、コロナで暮れようとしている。例年通り、一月に二つのクラブの写真展を終え、2月からは撮影会の行脚が始まった。しかし感染が広がるにつれて、ほとんどのグループや企業の活動が停止、何もすることがなくなった。 “徒然の章《コロナと付き合った一年》中務敦行” の続きを読む

コラム/日本の島できごと事典《プロローグ》フリージャーナリスト 渡辺幸重

石垣原人

日本は島国です。いくつかの大きな島と多くの小さな島が日本列島を作り、文化を伝えあいながらそれぞれの社会を作ってきました。島は“外世界”からの情報を受けて“内世界”に伝え、同時に中央権力の政策や社会の大きなうねりに翻弄されてきました。小さな島の歴史はあまり知られていませんが、そこには日本の歴史の痕跡がくっきりと残っています。島は日本社会を映す“鏡”であり、「島を見ると日本がわかる」のです。島での“できごと”から「この国はどんな国か」「この国をどういう国にするか」考えてみましょう。 “コラム/日本の島できごと事典《プロローグ》フリージャーナリスト 渡辺幸重” の続きを読む

LAPIZ2020冬号Vol.36びえんと《大坂選手がマスクに込めたBLM》Lapiz編集長 井上脩身

全米オープン試合会場にマスク姿で現れた大坂なおみ選手

大坂選手がマスクに込めたBLM
~差別助長のトランプ発言のなかで~

テニスの大坂なおみ選手が9月12日に行われた全米オープン女子シングルスで2度目の優勝を果たした。その快挙にもまして世界から喝采をあびたのは、黒人差別への抗議を表すマスクをつけてコートに現れたことだ。米誌タイムの「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたが、SNSには「黒人優遇運動をテニスに持ち込んだ」などと、彼女を批判する投稿も少なくない。女性差別、被差別部落への差別や在日韓国人・朝鮮人への民族差別などの従来からの差別に加えて、所得格差の拡大にともなう貧困者差別、国際化による黒人差別が日本でも大きな社会問題となってきている。差別の横行を放置してよいのか。大坂選手がマスクを通して問いかけたのは、多様な人々で構成される21世紀社会の中での、人としての在りようだと私は思う。 “LAPIZ2020冬号Vol.36びえんと《大坂選手がマスクに込めたBLM》Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

LAPIZ2020冬号Vol.36《巻頭言》Lapiz編集長 井上脩身

伊藤詩織さん

 アメリカの大統領選は前副大統領のジョージ・バイデン氏が勝利しました。敗れた現職大統領のドナルド・トランプ氏は、「開票に不正があった」などとして法廷闘争による大逆転を狙っていますが、その悪あがきは世界中から冷笑をかっています。
トランプ氏の敗因はいろいろあるようです。新型コロナウイルスの感染力を軽視したことに加えて、ロシア疑惑、脱税疑惑など、彼につきまとううさん臭さに多くの人たちが嫌気をさしていました。セクハラ疑惑もその一つです。女性票が逃げていくのも当然のことでした
セクハラといえば、アメリカのタイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に、自らの性暴力被害を公表したジャーナリストの伊藤詩織さんが選ばれました。性被害を受けたことを公にした勇気と、それによって性暴力告発キャンペーン「♯MeToo運動」を後押ししたことが評価されたとみられています。 “LAPIZ2020冬号Vol.36《巻頭言》Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

LAPIZ2020冬号 Vol.36《Lapizとは》Lapiz編集長 井上脩身

 

パレスチナの少女

Lapizはスペイン語で鉛筆の意味。(ラピス)
地球上には、一本の鉛筆すら手にすることができない子どもが大勢いる。
貧困、紛争や戦乱、迫害などによって学ぶ機会を奪われた子どもたち。
鉛筆を持てば、宝物のように大事にし、字を覚え、絵をかくだろう。
世界中の子どたちに笑顔を。
Lapizにはそんな思いが込められている。