連載コラム/日本の島できごと事典 その8《移住者の島》渡辺幸重

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生き物は定住と移動を繰り返します。移動の最大の理由は「食うため(食糧を求めて)」でしたが、“アフター・コロナ時代”でも同じなのでしょうか。
東京の竹芝桟橘から伊豆大島経由のジェットフォイルで2時間25分で行ける伊豆諸島の島に利島(としま)があります。人口337人(2015年)・周囲約18mの円錐状の形をした島で、住民の約半数、20~40代の8割以上が移住者という珍しい島です。役場職員の実に約9割が島外出身者です。利島の物流を支え、定期航路の離着岸事業などを行う株式会社TOSHIMAの社員の約9割もIターン者で、いまでは若い島外出身者が利島の社会を支えているといえます。
利島への移住者は役場や農協に勤めたり、日本一の生産を誇る椿油の仕事をしたり、漁業を営んだりしています。芸術活動をするとか、リモートで東京の仕事をするとかではなくて多くの人が“島の仕事”に従事しているのが特徴です。そして「海や山で採れる自然の恵みのすばらしさ、台風や冬の西風など自然の厳しさと共に生活する」島の現実を受け入れています。
利島村は1島で自治体を構成する小さな村です。「利島活性化活動」として下草刈り作業や椿の実の収穫作業に学生ボランティアを募集し、年齢制限なしの「ふるさとワーキングホリデー」制度を実施するなど普段から島外在住者との交流をしています。椿農家の高齢化や後継者不足など問題がないわけではありませんが、島の人口は、戦後の混乱期を除き江戸時代から現在まで300人前後で推移し、他の島に比べて過疎問題や高齢化の問題が少ない不思議な島なのです。
利島は、子どもが生まれると他家に子どものお守りを頼むボイという慣習があり、両家が親戚関係を結ぶなど人の繋がりが強いところです。逆にそれが“よそ者”としてでなく“身内”として受け入れる素地になっているのかもしれません。
コロナ禍は社会の価値観を変えると言われます。利島の「島の生活」のなかに“コロナ後のパラダイム”のひとつが存在しているような気がします。

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