連載コラム/日本の島できごと事典 その10《南西諸島と琉球列島》渡辺幸重

 みなさんは鹿児島県南端から台湾北東にかけて連なる島々を何と呼びますか。「南西諸島」「琉球列島」「琉球弧」という言葉を思い浮かべるでしょうが、これらの言葉に違いはあるのでしょうか。
「南西諸島」の名称は明治期に国の水路部(海上保安庁の前身)が使い始めた行政用語です。九州鹿児島県に属する薩南諸島(口之三島を含む大隅諸島、吐?喇列島、奄美群島)、沖縄県に属する沖縄諸島(沖縄島とその周辺)、宮古列島、八重山列島、さらに沖縄諸島の東にある大東諸島および八重山列島の北にある尖閣諸島を含むとされています。「琉球列島」と「琉球弧」はほぼ同じような使われ方をしており、琉球弧の方は地学的な説明に多いようです。琉球列島の範囲は必ずしもはっきりせず、次の1)~3)のように南西諸島の全体あるいはその一部となります。
1)南西諸島と同じ地域
2)かつての琉球国の領土とほぼ重なる地域。奄美群島、沖縄諸島、宮古列島、八重山列島の総体
3)奄美群島を除くほぼ北緯27度以南の沖縄県所属の島々の総称
2)あるいは3)の地域を「琉球諸島」と呼ぶこともあります。すなわち、沖縄島は南西諸島・琉球列島・琉球諸島・沖縄諸島に属します。
これらの島々の総称をどう呼ぶかは分野や立場によって異なります。私は大都市中心の呼び方が嫌いなので「(東京から見て)南西にある諸島」という言い方にはひっかかりがあります。大和時代の「南島」が「琉球」と重なるのでどちらかというと琉球列島の方を好みますが、琉球国の支配地域と完全に重なるわけではないし、琉球国という支配者側への反発もあるので迷いがあります。中国の歴史書には流求、流乢、流鬼、瑠求などの文字がみえ、琉球は中国の呼び方だから嫌いという人もいるようです。私はとりあえず「九州島から台湾島の間に弧状に連なる島々」とし、南西諸島と琉球列島を状況によって使い分けるようにします。