春の宵物語《春宵一刻値千金》片山通夫

先月「冬の夜の昔話」でアイヌ民族の小史のそれもほんの一部をのぞき見してきた。Lapiz春号では「春の宵物語」で一献傾けながら、うつらうつらと思うがままに綴ってみたい。

「春宵一刻値千金」という言葉がある。

春夜  蘇軾

春宵一刻直千金
花有清香月有陰
歌管楼台声細細
鞦韆院落夜沈沈

蛇足をさっそく・・・。

春宵(しゅんしょう)一刻(いっこく)直(あたい)千金(せんきん)
花に清香(せいこう)有り月に陰有り
歌管(かかん)楼台(ろうだい)声細細(さいさい)
鞦韆(しゅうせん)院落(いんらく)夜沈沈(ちんちん)

春の夜のすばらしさは、ひとときが千金にもあたいするほど貴重なものだ。
花には清らかな香がただよい、月はおぼろにかすんでいる。
高殿から聞こえていた歌声や管弦の音は、
先ほどまでのにぎわいも終わり、今はかぼそく流れるばかり。
人気のない中庭にひっそりとブランコがぶら下がり、夜は静かにふけていく。

こんな意味だそうだ。

ただ本編は漢詩を説こうというのではない。

春の宵の戯言を綴って行こうということ。