コロナ《アメリカファーストからの転落~コロナ蔓延世界最悪の意味~》井上脩身

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コロナ菌

昨年2月24日、イタリア保健省は新型コロナウイルス感染例が229件にのぼり、6件の死亡例があると発表、イタリア北部は事実上封鎖状態になった。コロナは次いで地中海を越え、アフリカで蔓延するであろうと思われた。しかし、その予想は外れた。新型コロナウイルスは大西洋を越えて、アメリカで猛威を振るったのである。世界一の経済大国がコロナに対してあまりにも脆弱であることにあ然とするが、このことは、アメリカが世界のファーストの座からずり落ちるときがそう遠くないことを示している、と私はみる。

私は文明の軸が、2000年をかけて西へ西へと動いてきたと考えている。
文明史の起点を古代ギリシャに置く私は、地中海世界が初期の文明の軸であったと捉える。コロンブスの「新大陸到達」によって西洋文明は地中海の外に飛び出し、18世紀半ばの産業革命によって、文明の軸がイギリスに移る。第一次世界大戦後、アメリカが飛躍的に経済力を高め、文明の軸はイギリスの独壇上から大西洋をまたぐ米英二本立てに。第二次世界大戦後は、アメリカが経済力、軍事力ともに突出し、文明の軸となる。
以上みてきたように、文明の軸は地中海世界から始まって、イギリスへ、大西洋世界へ、そしてアメリカへと移ってきた。地中海から西回りしてきたのである。
2008年の大統領選でオバマ氏が当選した。オバマ氏はアメリカ史上初の黒人大統領であるだけにとどまらず、地中海世界以来、一貫して白人が支配してきた文明の根幹にくさびを打ちこんだのである。それは、文明の軸が白人世界から非白人世界に移ることを意味しよう。2011年、中国がGDPで日本を抜き世界2位になったことはその証左にほかならない。21世紀の前半は、アメリカと中国が綱引きをする形で、太平洋世界が文明の軸になると私はよんだ。
トランプ前大統領は文明の軸がアメリカから太平洋に移ることにノーを突き付け、「アメリカファースト」をスローガンに掲げた。歴史を逆流させようというそのトランプ政治にコロナが襲いかかったのである。アメリカファーストの座を揺るがしかねない中国がその発生源であることがトランプ氏を逆上させた。「チャイナウイルス」とさげすんで敢えて軽視し、密集の前でマスクをつけない素顔をさらけだした。
この原稿を執筆している2月12日現在のアメリカの感染者数は2728万人、死者は47万1567人。感染者が2番目に多いインド(1087万人)、死者が2番目に多いブラジル(23万人)のいずれも2倍以上と、感染状況は世界最悪である。トランプ氏の失政であることは明白だが、文明史の観点からは、アメリカがもはや21世紀文明の中心国でなくなったことを、図らずも証明したと言って過言ではない。結果として、文明の軸が一層中国側に近づくことになった。コロナによって、軸の移動が10年早まったのである。
いちはやくコロナを収束させた中国は、国産ワクチンを開発途上国50カ国以上に供給する「ワクチン外交」を進めている。コロナ収束が見通せないなか、非白人世界のなかで、中国の存在感が一層増すことになることはまぎれもない。文明の軸が中国に移るのは時間の問題であろう。ならば日本はどう中国と向き合っていくべきなのか。これまでのようなアメリカ一辺倒主義では済まなくなることは誰の目にも明らかである。

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