夏の千夜一夜物語《置いてけ堀 別バージョン》片山通夫

むかしむかし、あるところに、大きな池がありました。
水草がしげっていて、コイやフナがたくさんいます。
でもどういうわけか、その池で釣りをする人は一人もいません。
それと言うのも、ある時ここでたくさんフナを釣った親子がいたのですが、重たいビク(→魚を入れるカゴ)を持って帰ろうとすると、突然、池にガバガバガバと波がたって、
「置いとけえー!」
と、世にも恐ろしい声がわいて出たのです。
「置いとけえー!」
おどろいた親子は、さおもビクも放り出して逃げ帰り、長い間、寝込んでしまったのです。
それからというもの、恐ろしくて、だれも釣りには行かないというのです。 “夏の千夜一夜物語《置いてけ堀 別バージョン》片山通夫” の続きを読む