夏の千夜一夜物語《絵から抜け出した子ども》構成・片山通夫片山通夫

むかしむかし、あるところに、子どものいない夫婦がいました。
「子どもが欲しい、子どもが欲しい」
と、思い続けて毎日仏さまに願ったところ、ようやく玉のような男の子を授かったのですが、病気になってしまい、五歳になる前に死んでしまったのです。
夫婦はとても悲しんで、毎日毎日、泣き暮らしていました。
でも、ある日の事。
「いつまで泣いとっても、きりがない」
「そうね、あの子の絵をかきましょう」
夫婦は子どもの姿を絵にかいて、残す事にしたのです。
それからというもの、父親は座敷に閉じこもって絵筆を持つと、食べる事も寝る事も忘れて一心に絵をかきつづけました。
やがて出来上がった絵は、子どもが遊ぶ姿をかいた、それは見事な出来映えでした。
二人はその絵をふすま絵にして、我が子と思って朝に晩にごはんをあげたり、話しかけたりしました。 “夏の千夜一夜物語《絵から抜け出した子ども》構成・片山通夫片山通夫” の続きを読む