連載コラム・日本の島できごと事典 その34《地球上最悪の侵略的植物》渡辺幸重

ナガエツルノゲイトウ

<「地球最悪の侵略的植物」淡路島で畑に広がる><地球上最悪の“侵略的植物”各地で勢力拡大>という新聞記事の見出しにびっくりしました。地球上最悪の侵略的植物・ナガエツルノゲイトウが淡路島や奄美大島などで繁殖し、問題になっているというのです。それにしても“地球上最悪”というのは大げさな、と思いながら記事を読んでみました。 2021年6月7日の読売新聞は<「地球最悪の侵略的植物」淡路島で畑に広がる…駆除作業実らず「もはや住民だけでは防げない」>という見出しで、「兵庫県洲本市(淡路島:筆者注)のため池で確認された特定外来生物の水草ナガエツルノゲイトウが、周囲の畑などに広がっているのが見つかった」と伝えています。4月にはため池の水面の6割ほどを覆っていたナガエツルノゲイトウが周辺の草むらや畑にも多数生えているのが見つかったというのです。水上でも陸上でも繁殖し、抜いても少しでも根が残れば再生し、「抜いても抜いても、すぐ生えてくる」のだそうです。
日本農業新聞は7月11日記事で、地球上で最悪の侵略的植物といわれる外来水草ナガエツルノゲイトウが関東以西の20府県に侵入したことを報じています。弊害は「繁殖力が強く、ため池や農地に一度侵入すると根絶は困難。大繁殖して、水稲の大幅減収や農業水利施設の目詰まりを引き起こす」と指摘。南日本新聞(鹿児島県)dは奄美大島で休耕田に生い茂ったナガエツルノゲイトウの刈り取り作業をレポートされました。国立環境研究所によると、1989年に兵庫県尼崎市で初めて国内で発見されたそうです。分布地図をみると、淡路島も九州島と台湾にはさまれる南西諸島のほとんどの島も分布地域になっています。
では、なぜ“地球上最悪”なのでしょうか。資料を読むと「茎の断片だけで増え、生長が速い」「水面に限らず陸上でも生育し、耐塩性も強い」という性質を持ち、「在来植生と競合したり、減少させる」「農作物の成長を阻害する」「排水路を目詰まりさせるなどで洪水が起きやすくなる」などが危惧されています。ただ、“地球上最悪”といわれるほどなのかどうかはわかりませんでした。とはいえ、外来生物が生態系を乱すことは確かです。外来生物法で指定された特定外来生物は、栽培や移植、販売、譲渡、運搬などのすべてが禁止されています。
写真:「日本の水生植物」よりhttps://waterplants.web.fc2.com/invader_nagaeturunogeitou.html