夏の千夜一夜物語《幽霊の話2》構成・片山通夫

その時も残業をしていたそうなのですが、足音や仕事をしているような音はしなかったそうです。
ただ、どこからかカタカタという音が絶え間なく聞こえていたそうです。

気になるので音を辿っていくと、応接室に行きつきました。ドアを開けると、さらにカタカタという音が大きくなります。

何の音だろう?と音のする方を見てみると、壁際の棚に置かれた人形のケースがカタカタと震えていたのだそうです。

それが置かれている棚や床、壁には異常はなく、ケースだけが音をたてている風景にゾッとして、その日は早々に残業を切り上げたそうです。

その人形は古いもので、いつからあったものなのか、誰が持ってきたものか、誰も知らないそうです。
「社長とか、専務とかに聞いたら知ってるかもね」と知人は言っていますが、誰も聞く人がいないので、謎のままになっています。