夏の千夜一夜物語《ええじゃないか》構成・片山通夫

「ええじゃないか」騒動に興じる人々。(ウイキペディア)

 空から降ってくるのは雨や雪だけでなく、時には雹(ひょう)や花粉も降ってくるが、御札や豆までとなると、気象庁も困ってしまう。ところが江戸時代に、これらが実際に降ったらしい。伊勢神宮の御札が舞い、民衆が熱狂的に「ええじゃないか」と叫び踊ったという話は有名である。(写真)
御札は有り難いが、豆だと困ったことになる。菅茶山の『筆のすさび』によれば、豆が降った翌年は必ず飢饉(ききん)になるという。「天地の気」が異物を孕(はら)んでおかしくなったからで、それが凶作をもたらすという訳だ。いわば天からの警告である。
炒(い)り豆のような石が合戦の時に降ったという伝説もある。炒り豆は節分などで鬼を打つものだが、天から見れば、地上で戦争を行っている人間たちこそ、追い払うべき鬼なのかもしれない。
(日文研妖怪DB班・兵藤晶子)