びえんと《五七五に託すハンセン病患者の叫び 上》Lapiz 編集長 井上脩身

~不条理な強制隔離政策のなかで~

北條民雄著『いのちの初夜』の表紙

11月末、映画『一人になる――医師小笠原登とハンセン病強制隔離政策』を見た。ハンセン病患者に対する強制隔離に反対しつづけた小笠原医師(1888~1970)の生涯を通して、らい予防法が引き起こした差別と偏見を訴える映画である。私はたまたまハンセン病患者たちの苦しみや怒りを詠んだ短歌、俳句、川柳を収録した『訴歌』に目を通していた。さらに偶然ながら、ハンセン病患者であった作家、北條民雄の代表作『いのちの初夜』を読み終えたばかりであった。この小説は、主人公がハンセン病療養所に隔離された最初の日を書き表した作品だ。2001年、熊本地裁は、ハンセン病歴者は国の隔離政策の被害者であると認定、さらに患者の家族についても同地裁は2016年、人格権が侵害されたと判示した。だが、病苦者への差別・偏見は今なお根強い。『訴歌』のなかの川柳を通して、ハンセン病患者の思いに迫りたい。 “びえんと《五七五に託すハンセン病患者の叫び 上》Lapiz 編集長 井上脩身” の続きを読む