連載コラム・日本の島できごと事典 その50《日本列島の誕生》渡辺幸重

パンゲア大陸

 気の遠くなりそうな古い時代からの地球の歴史を知り、大地の動きを実際に目で確かめられる地域として認定されたのが「ジオパーク」で、国内には日本ジオパークが44地域あり、そのうちの9地域がユネスコ世界ジオパークになっています(20219月現在)。ジオパークにはジオサイトという観察拠点がありますが、島や岩礁が多く含まれています。それは、火山活動など地球内部とつながる活動が表に現れ、島や岩礁として露出しているところが多いからです。

 日本列島はかつてユーラシア大陸の一部でしたが、約3,0002,000万年前に大陸の一部が分離し始め、湖状の日本海の原形が誕生し、さらに分離が進行して約1,500万年前に日本海と日本列島が形作られたといわれています。実は、日本列島が大陸の一部だったことを証明する場所が島根県の隠岐諸島にあります。隠岐の島後でみられる「隠岐片麻岩の露頭」がそれです。地底の圧力と熱によってできた約25,000万年前の変成岩で、その頃は地球上にはパンゲアと呼ばれる一つの大きな大陸がありました。大陸移動説はご存知だと思いますが、地殻変動によって大陸は少しずつ分裂していき、ユーラシア大陸ができ、その端に日本列島になった陸地があったのです。地下深くで生成された岩石はプレート活動と約600万年前の火山活動による隆起で隠岐諸島・島後の隠岐片麻岩として露出し、いま私たちの目の前にあります。

 隠岐諸島は、ユーラシア大陸と一体だった時代、湖の底だった時代、深い海底にあった時代、火山活動によって隆起した時代、島根半島と陸続きになった時代を経て約1万年前に地球の温暖化による海面の上昇で現在のような諸島を形づくりました。実に千変万化の島と言えます。2008年の初夏、隠岐で約2,000万年前の地層からワニの歯の化石が発見されました。その頃、隠岐はワニが棲むような湖の環境であったのです。すなわち、日本列島が大陸から離れ始め、湖ができ、その後日本海になったということを証明しています。

 各地のジオパークは地球のダイナミックな歴史を教えてくれます。島や岩礁はその証人なのです。