宿場町シリーズ《東海道・水口宿 上》文・画 井上脩身

宿場の江戸口に当たる東見附の跡

『竜馬がゆく』の舞台の街並み

 いっかいの剣術つかいだった坂本竜馬が倒幕の志士に変わったのはいつか。司馬遼太郎の代表作『竜馬がゆく』(文春文庫)を読んでいて、興味深い記述にであった。竜馬が土佐に帰る途中、水原播磨之介と出会い、東海道を同行。播磨之介は内大臣三条実万に仕え、水戸の徳川家から三条家への密書を帯びて京にもどろうとしていた。幕府が反幕運動の封じ込めを強めるなか、播磨之介が水口宿で捕り方につかまったのを機に竜馬は天下というものを考えるようになる。もちろん小説の上での話だが、水口宿での出来事だけで14ページにおよんでいる。大長編『竜馬がゆく』のなかで、街道の宿場がこれほど長々と舞台になった例はほかにない。司馬は水口への強い思い入れがあったのだろうか。 “宿場町シリーズ《東海道・水口宿 上》文・画 井上脩身” の続きを読む