22年夏号Vol.42 連載コラム・日本の島できごと事典 その65《ウグイス》渡辺幸重

ダイトウウグイス(「日本の野鳥識別図鑑」)

 ウグイスは国内にウグイス、ハシナガウグイス、リュウキュウウグイス、ダイトウウグイスの4種類の亜種が生息しています。亜種のウグイスは北海道から九州まで広く分布し、礼文島や壱岐・対馬、伊豆諸島、屋久島・種子島などでも見られます。ハシナガウグイスは小笠原諸島に分布、リュウキュウウグイスはトカラ列島以南の琉球弧(南西諸島)に生息し、ダイトウウグイスはかつて南大東島・北大東島で目撃されました。

 ダイトウウグイスは、1922(大正11)年に鳥獣標本採集家・折居彪二郎(ひょうじろう)が南大東島で初めて2羽を発見し、捕獲して世に知られるようになりましたが、その後は1984(昭和59)年に北大東島で目撃されたのを最後に記録がなく絶滅したと考えられていました。ところが2001(平成13)年に沖縄島でダイトウウグイスと思われるウグイス群が確認され、その後も奄美群島での目撃情報があったため国立科学博物館が調査したところ、奄美群島の喜界島でオス10羽、メス5羽と巣7個が発見されたのです(2008521日発表)。環境省の2006年鳥類レッドリストでも絶滅とされたダイトウウグイスが蘇ったのです。

 ハシナガウグイスは本州の亜種ウグイスより17年早く記載されているためウグイスの“基亜種”とされており、小笠原群島の父島や西島、火山列島の南硫黄島に生息しています。ちなみに、小笠原諸島は小笠原群島(聟島列島・父島列島・母島列島)、火山列島(硫黄列島)、西ノ島、南鳥島、沖ノ鳥島からなる東京都に所属する島嶼群で、小笠原群島は小笠原諸島の一部になります。ハシナガウグイスの小笠原群島の集団と火山列島の集団は遺伝子タイプが異なることが判明しており、ルーツは同じでも交わることなく別々に変化してきたといえます。

 かつては聟島列島の聟島(むこしま)や火山列島の北硫黄島にもハシナガウグイスが生息していました。西島でも一時期は定着した個体を確認できない時期がありましたが、ノヤギなど外来動物の駆除の結果、定着が確認されるまでに回復しました。外来動物の駆除が西島では間に合い、聟島では間に合わなかったということになります。ハシナガウグイスが20世紀半ばに絶滅したといわれる聟島では近年、本州・伊豆諸島のものと同じ亜種のウグイスが見られるようになりました。 越冬のためと思われますが、聟島では外来動物が駆除されているため、かつてのハシナガウグイスに代わって本州・伊豆諸島と同じ亜種のウグイスが定着する可能性があるといわれています。

写真:ダイトウウグイス(「日本の野鳥識別図鑑」)

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