千夜一夜の夏《幽霊と妖怪》片山通夫

さて幽霊や妖怪の本場と言えばやはり1200年以上の歴史を誇る京都がダントツだと思われる。何がダントツかと言えば一番「出そうな場所が多い」と言うことに尽きる。特に妖怪は平安の時代にはずば抜けて多かった。狐が母だという陰陽師・安倍晴明に至っては妖怪を退治するのが仕事だったようで、天文学(呪術・科学)に長けて式神を自在に操った。

晴明は、都を、天皇を、そして貴族や諸々の人びとを脅かす妖怪を呪術で封じ退治した。
ただ渡辺綱のように物理的に鬼を退治したわけではないようだ。渡辺綱は大江山酒呑童子退治は『御伽草子』などに載る有名な話で源頼光が家来の藤原保昌・渡辺綱・坂田金時・碓井貞光・占部季武を引き連れて大江山に出向き、八幡・住吉・熊野三神の加護を得ながら酒呑童子一味を見事討ち果たす。一行は、山に囚われていた姫と救い出し、酒呑童子の首を土産に都へ凱旋し、帝に首尾を報告してたくさんの褒美にありついた。また京都の一条戻橋の上で茨木童子の腕を源氏の名刀「髭切りの太刀」で切り落とした逸話でも有名。謡曲『羅生門』は一条戻橋の説話の舞台を羅城門に移しかえたものである。一条戻橋は安倍晴明を祀る晴明神社の近くである。