千夜一夜の夏《幽霊と妖怪「モノノケたちの宴」》片山通夫

源頼光の土蜘蛛退治を描いた『源頼光公館土蜘作妖怪図』

幽霊か妖怪かは定かに見分けがつかない「モノノケ」がこの季節には出没する。ただよほどの感性の持ち主でないとそのモノノケの存在はわからない。モノノケ側からすれば、歯がゆいとイライラしているかもしれない。この季節とはお盆の頃である。
そのモノノケたちは理不尽にも、自らの意思とは違って殺された人々を指す。交通事故や殺人事件などで亡くなった方々も勿論だが、主な「構成モノノケ」は戦争犠牲者だ。例えば先の戦争に参加した兵隊、その兵隊に殺戮された人々など、様々な形で理不尽にも殺された人々のいわゆる亡霊はこのお盆の季節にやはりあの世から「帰って来れるのだろうか」と思う。世界中に数多いるこれら亡霊はどこへ帰れるのか。ある者は家族のもとに帰れるだろう。しかし例えば沖縄戦、ヒロシマやナガサキで一家もろとも犠牲になった場合は?
宙に迷う魂はただただ宙を舞うばかりである。

奇しくも今日8月15日は終戦記念日。      魂の安らかならんことを。                                                                                                合掌。  (完)