読切り連載 アカンタレ勘太12-3《夢の作文》文・画 いのしゅうじ

勘太は夢のつづきをかんがえている。
ぼくとテッちゃん、ユキちゃん、タミちゃんはこてきたい。
ふえふきどうじのいしょうを着ている。
ぼくはよこぶえ、ユキちゃんはタンバリン、タミちゃんはもっきん、
テッちゃんはたいこ。
飛行機からおりると、みどりの丘からカネの音がきこえてくる。
赤いやねの、とんがり帽子のとけい台のカネだ。
イッ子せんせいが「カネの音に合わせてえんそうしましょう」という。
みんなで丘の上にあがる。「さあ、はじめるわよ」
せんせいがしきをする。
曲は、さいしょは「鐘(かね)の鳴る丘」、つぎは「笛吹童子」。
キンコンカン!
とカネがなる。
ぼくがヒャリコヒャラレロと笛をふく。
もっきんがコンキンコンとなり、
タンバリンがチョンチョンチョロロンとひびく。
テッちゃんがたいこをドンドンドンとたたく。
すると、丘のむこうからぼくらと同じくらいのとしの子どもたちがやってきて、おどりだす。
ぼくらも、えんそうしながらいっしょにおどる。
勘太がここまでかんがえたとき、あまりにも頭をつかったので、くらくらして机につっぷした。
「勘太、どこかわるいんか」
おかあさんがおでこに手をあてる。ねつはない。
ノートには、「もきん」「タバリン」「とけだい」などと、脱字だらけの文字がいっぱい書いてある。
「せんせいが式?」
おかあさんはちょっと首をかしげ、プーとふきだした。
「式というかんじを知ってるだけましか」
勘太はおきあがって、作文ようしをカバンからとりだした。
「せんせいがいるので、ぼくはうれしかったです」までかいてある。
つづきをかきだした。

ぼくらはふえふきどうじになってとけだい
まで行きました。とけだいはとんがりぼうし
かぶってました。カネがキンコンカンなりま
した。イッ子せんせいが式して、ぼくらはえ
んそうしました。ぼくはヒャリコヒャラレロ
とふえをふきました。もきんとタバリンとた
いこがなり、虹の子どもたちがおどりました。
ぼくらもいっしょにおどりました。おどって
るときもふえをふきました。それから虹の子
にさよならいいました。(おわり)

作文ようしは文字でいっぱいだ。
「一まいにまるまる書いたのね」
イッ子せんせいが「よくがんばったわ」と言ってくれたので、
勘太はくもの上にのぼったきもちだ。
自分の席にもどって、ひょっとしたらまだ夢のなかにいるのかな、とほっぺをつねってみる。
「イタタッ!」
「どうしたん?」
ユキちゃんが顔をのぞきこんだ。
「ええことあったんやろ。勘太は顔にでるからすぐわかる。何があったん?」
「うーん、ユキちゃんらと虹に行って……」
「虹に行く?」
「いや、なんもない」
何もないどころか、
つぎの日、勘太の作文ががっこうのけいじばんにはりだされた。
各クラスから一点だけえらばれるのだ。
夕方、勘太の家のげんかんの戸が、ガラガラッといきおいよくあいた。
「カンちゃんの作文、一番になったんやて」
ユキちゃんのおかあさんの声が家中にひびいた。
げんかんにでた勘太のおかあさん。空気でパンパンの風船みたいに、
顔が喜びいっぱいにふくれあがっている。
「アカンタレ……が、……ま、まぐれですやん」