好評発売中!《片山通夫写真集 ONCE UPON A TIME》編集室

片山通夫写真集 ONCE UPON A TIME 表紙

2022年10月23日発売開始
60年代から撮り続けたドキュメンタリー写真集。1960年代のキューバ、「北送」と呼ばれた在日朝鮮人の祖国帰還の新潟港。ブルガリア、チェコ、ルーマニアなど東欧諸国の民主化や廃墟となったチョルノブイリ、作者のライフワークとなったサハリンの戦後問題。そして時代を映す日本の折々の風景をモノクロームで描いた作品集。
全286頁。モノクローム写真239点を収録。

 

 

本体価格 3600円(税込)+送料(370円)
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連載コラム・日本の島できごと事典 その79《犬田布騒動》渡辺幸重

島人の決起を描いた画(「犬田布騒動150周年シンポ」資料)

 1604(慶長14)年の薩摩藩による琉球侵攻以降、奄美群島(鹿児島県)は薩摩藩の直轄支配を受け、黒砂糖の専売制度(砂糖総買入制)が敷かれて過酷な搾取を受けました。藩はサトウキビの作付を強制して黒糖の保有や売買を禁じ、私的売買(密売)は死罪という思い罪を科しました。そのなかで1864(元治元)年、徳之島の犬田布(いんたぶ)村で農民一揆が起きました。これを犬田布騒動または犬田布義戦(ぎせん)と呼びます。 “連載コラム・日本の島できごと事典 その79《犬田布騒動》渡辺幸重” の続きを読む

近刊解説《片山通夫写真集 ONCE UPON A TIME》井上脩身

「片山作品に見る冷戦下のフォトジャーナリズム」 003

祖国への帰還の夢とおく
 米ソ冷戦はヤルタ会談に始まった、と述べた。その合意に基づくヤルタ協定で、樺太南部はソ連に返還されることとされた。この会談の3カ月後、同じアメリカ、イギリス、ソ連の3カ国によってポツダム会議が開かれ、日本はポツダム宣言を受諾して無条件降伏。1951年のサンフランシスコ講和条約で南樺太の全ての権利を放棄することになった。

南樺太は日露戦争後の1905年のポーツマス条約によって日本の領土となり、1931年には、漁業、林業、製紙業を中心に日本人40万6557人が移住していた。 “近刊解説《片山通夫写真集 ONCE UPON A TIME》井上脩身” の続きを読む

近刊解説《片山通夫写真集 ONCE UPON A TIME》井上脩身

「片山作品に見る冷戦下のフォトジャーナリズム」 002

陽気さの奥の翳を捉えるカメラアイ

キューバの近現代の歴史を概観しておこう。
スペインの支配下にあったキューバが1902年に独立した後、製糖産業などにアメリカ資本が多数進出。1952年、バティスタがクーデターで政権を奪取すると、アメリカのキューバ支配がいっそう進んだ。バティスタ独裁政治に反旗を掲げたカストロは、メキシコに亡命中にゲバラに出会って後の1956年にキューバに上陸、2年余りのゲリラ闘争のすえ、1959年1月、バティスタを国外に追放、革命政権を樹立した。 “近刊解説《片山通夫写真集 ONCE UPON A TIME》井上脩身” の続きを読む

連載コラム・日本の島できごと事典 その78《ウシウマ》渡辺幸重

ウシウマ(1934年撮影)

 「昔は種子島(鹿児島県)に牛と馬の合いの子がいた」という話を子どもの頃、耳にしたことがありました。名前をウシウマと聞いたもののどういう形をしているか想像できませんでした。調べてみると、「頭は馬、首は牛」といわれる小型の馬で、たてがみと尾に長い毛がない珍獣であることがわかりました。第二次世界大戦後の1946(昭和21)年6月頃、種子島で飼育されていた最後の1頭が死に、ウシウマは絶滅したといいます。 “連載コラム・日本の島できごと事典 その78《ウシウマ》渡辺幸重” の続きを読む

近刊解説《片山通夫写真集 ONCE UPON A TIME》井上脩身

「片山作品に見る冷戦下のフォトジャーナリズム」 001

片山通夫さんは私と同い年の1944年生まれである。高校に入学したのが1960年、いわゆる安保の年だ。安保条約はつまるところ東西冷戦のなか、わが国がアメリカの核の傘に入ることであったといえるだろう。核戦争の恐れは1962年のキューバ危機により具体的恐怖となり、人類は核の均衡という緊張状態のなかで息をつめて生きていくことになる。こうした時代背景をうけて、若き日の片山さんはカメラを手にキューバにとび、米ソ対立の最前線にあるカリブの国の人たちの実相に迫った。そこで磨いたカメラアイはやがて日本の敗戦でサハリンに取り残された朝鮮人に向ける。深いしわの奥ににじむ誇りと尊厳。片山さんはレンズを通して物言わぬ辺境の地の人たちに寄り添う。そこに私はフォトジャーナリストとしての鋭い時代感覚と温もりある人間性をみる。 “近刊解説《片山通夫写真集 ONCE UPON A TIME》井上脩身” の続きを読む

連載コラム・日本の島できごと事典 その77《怒りの孤島》渡辺幸重

映画『怒りの孤島』のポスター

1958(昭和33)年2月封切りの『怒りの孤島』という映画を、私は子どもの頃に移動映画で観た記憶があります。汚い檻の中に“オオカミ少年”のような男の子が閉じ込められ、みすぼらしいなりの少年数人が島を脱走する映像がショッキングでした。同じ島の人間として、島社会の“闇”をえぐられているような気がしてその記憶を封印しましたが、映画では「愛島」となっている島は瀬戸内海の情島(山口県)で、実際にあった事件がモデルであることを大人になって知りました。梶子(舵子)として雇い入れた少年たちへの虐待の表現には曲解や誇張もあり、その後、島では少年虐待のレッテルを払拭するための努力があったこともわかりました。第二次世界大戦直後の激しく変化する社会の中で島の古い因習も国民の社会意識も大きく変わる過渡期のできごとでした。
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