連載コラム・日本の島できごと事典 その85《1万5,528島》渡辺幸重

新基準による島嶼数(『島へ!』2022年12月号記事より)

 日本は島国です。では、日本に島はいくつあるでしょうか。これまで公式には1987(昭和62)年に海上保安庁が最大縮尺海図と2万5千分の1地図からカウントした 6,852」とされてきました。「満潮高水位1m以上」「周囲0.1km以上」などが基準とされ、北海道、本州、四国、九州の4島や北方四島も含まれます。ところが今年12月、日本の島嶼数を「15,528」とする『新版 日本の島事典』が発刊されました。国土地理院地図基礎データを使って新しい基準「周囲0.1㎞以上の自然島+周囲0.1㎞未満の名前が付いた島」によって数え直したということです。 「日本の島の総数」が公的機関から初めて発表されたのは1946(昭和21)年で、GHQの指揮のもとで海上保安庁水路部が「外海で1,025、内海と港湾内の島を含めると2,394余り」としました。その後、トカラ列島や奄美群島、小笠原諸島、沖縄の返還に伴って数は増え、1969(昭和44)年には「海図上の岸線0.1㎞以上の島について海上保安庁水路部が調査したもの」が「3,922」とされました。そして現在まで続く「6,852」が1987(昭和62)年に海上保安庁から発表されたというわけです。これは「海上保安庁水路部が1986年に調査したもの(北方領土については1969年調査)」となっています。

 このほか、島嶼社会研究会は1957(昭和32)年に「3,639」と発表。また、日本離島センターは1982(昭和57)年の『日本島嶼一覧[改訂版]』で「4,917」としました。2015(平成27)年国勢調査による日本の有人島数を「416」(滋賀県の沖島を含む)、無人島を「6,432」とする国土交通省の資料もあります。ただし、名前・面積・場所などを具体的に示したものは1982年の日本離島センターのものだけで、他の資料ではどの島がカウントされたか特定することはできません。

 今回の『新版 日本の島事典』が発表した「日本の島嶼数15,528」は、これらの島嶼数論議に一石を投じたもので、国土地理院地図データで名前がない島も含めて周囲0.1㎞以上の自然島かつ海島(海に囲まれた島)を数えたところ14,455島が存在することがわかりました。また、周囲0.1㎞未満であっても名前が付けられた自然・海島は1,073島でした。これには、EEZ外縁を根拠付けるために新たに名を付けた小島、領海のみを根拠付けるために新たに名を付けた小島、新たに国有化した小島など日本政府が国境無人離島として公表したものが含まれます。これらの総計が15,528島になります。

 なお、以上の数値は「海洋法に関する国際連合条約」を参考に満潮時に海上にある“陸地”を対象にしており、以前の「満潮高水位1m以上」という基準が変更されています。

また、干潮時に海上に現れ島状地となる地形(低潮線保全地区)を準島としてカウントすると島嶼・準島の総数は「15,712」になります。ちなみに、名前のない周囲0.1㎞未満の岩礁や人工島も含めてすべての島・岩礁を地図データから拾うと「114,886」にもなります。これらの小島や岩も日本列島を構成する重要な要素です。

 15,528島の都道府県別島嶼数では、長崎県が1,693島ともっとも多く、続いて北海道の1,585島(北海道島を含む)、鹿児島県の1,415島、岩手県の947島、宮城県の733島、沖縄県の728(沖縄島を含む)となっています。