Lapiz2021夏号 Vol.38 最近の記事紹介

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最近の記事
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匹が撮る!《再開された北朝鮮帰還・1971年》片山通夫2021-06-22
読切連載アカンタレ勘太 9《けしょうまわし》文・挿画  いのしゅうじ2021-06-23
切連載アカンタレ勘太 9-2《栃若すもう大会》文・挿画  いのしゅうじ2021-06-24

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読切連載アカンタレ勘太 9-2《栃若すもう大会》文・挿画  いのしゅうじ

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栃若すもう大会

イッ子せんせいが北島八百屋に顔をみせた。
「エイちゃん、七夕まつりをやったでしょ。おすもうはできないかしら」
栄三はけげんな顔だ。
「みんなでけしょうまわしを作ったそうよ」
きのう、ユキちゃんとタミちゃんがイッ子せんせいの下宿にやってきて、けしょうまわしを見せてくれた、とせんせいはいう。
「すもうの大会ですか?」
「うん、女の子もさんかできるといいわ」
栄三はその日のうちに「七夕まつり実行委員会」のメンバーをあつめた。
「おんな? そらあかん。すもうは男のせかいや」
栄三はねばった。
「おおずもうみたいに土をもりあげるのやない。じめんになわをうめこむだけ」
すったもんだしたが、
「男女平等の時代や」
女性のさんかをみとめ、お宮さんですもう大会をひらくことになった。
4月はじめ、「栃若桜花すもう大会」が開かれた。
広場にどひょうがつくられた。ゴザに50人くらいがすわっている。
その一番まえで正座しているのはイッ子せんせい。ちかくの着物すがたの男性が気になっている。ピリピリしたするどい目なのだ。
しゅつじょうする力士は子どもが30人。このなかに目の見えない登もいる。女の子はユキちゃん、タミちゃんら6人。ほかに中高校生や働いている若ものが10人。
みんな、しめこみ代わりにへこ帯をこしにまいている。
行司は栄三。剣道着にみをつつんでいる。
勘太はさいしょのとりくみに出ることになった。
相手は6年生の勝也。入学したときからいじわるしてきたあの勝也だ。勘太はヘビににらまれたカエル。立ちあう前からいすくめられている。
「ハッケヨーイ」
軍配がかえったしゅんかん、勘太はぐんとかつぎあげられ、どひょうの外にぼーんとほうりだされた。
つぎはユキちゃんの出番。相手はやはり6年生の女の子。がっこう一のおてんばだ。ユキちゃんの顔がひきつっている。立ち上がって1びょうもしないうちに、ユキちゃんはぱっとなげとばされた。
ユキちゃんは勘太のま上におちてきた。さけようとした勘太。顔が上下にひっくりかえっている。
「まるでろくろ首ね」
イッ子せんせいがあとでくすくすわらった。
よく日。
がっこうにこうぎの電話がかかった。
「女をどひょうに入れるとはけしからん」
校長室にイッ子せんせいが呼ばれた。
「校長としてあやまっておきました」
首をうなだれるイッ子せんせいだ。。
数年のち栃錦、若乃花が横綱になり、栃若時代をむかえる。やがて、女性のすもう大会もひらかれる。
とは、校長せんせいは思いもしなかった。
栃若すもう大会はこの一回でおわる。
(せんせい、悔しかったやろなあ)
イッ子せんせいの先見の明におどろく勘太。
(ひょっとしてクラタせんせいのアイデアかな?)
勘太の心の中で、クラタせんせいがチラチラしている。            (この回完)

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読切連載アカンタレ勘太 9《けしょうまわし》文・挿画  いのしゅうじ

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けしょうまわし

 三学期がもうすぐ終わる月曜日。
テッちゃんが教室にはいるなり、
「すもう見た」
と、みんなにじまんした。
おおずもうは今年(昭和28年)から大阪で三月場所がはじまった。その7日めの土曜日、テッちゃんはおとうさんにつれていってもらったのだ。
「栃錦と若乃花のすもうがすごかったんや」
テッちゃんは勘太をろうかにつれだした。
ぼくが栃錦をやる、勘太は若乃花や、とテッちゃんは勘太のおへそのあたりのベルトをつかんだ。
「ぼくがつりあげる。勘太はふんばるんや」
テッちゃんはつるのをとちゅうでやめ、頭を勘太の胸におしつけた。
「このとき、栃錦のまげがばらっとほどけた」
武史、隆三、裕三らが二人をかこんでいる。
隆三がからかった。
「テッちゃんは坊主頭や。まげないやん」
「やかましい」
勘太の体をはなした。
「水いりや。ちょっと向こうに行け」
「水?」
「行司がすもうを止めて、休ませるんや」
と、かいせつしたのはいうまでもなく武史。
ふたたび四つにくむ。テッちゃんは足をかけて勘太をどーんとたおした。
「栃錦のかち」
イッ子せんせいの声だ。いつのまにか、せんせいも見ていた。
「せんせい、栃錦のファンなの」
「若乃花もつよくなるわよ、きっと」
といって、みんなを教室にいれ、一時間目の国語のべんきょうをはじめる。
すもうがはやりだした。
朝、べんきょうのまえに運動場へ。棒で円をえがいてどひょうにし、とっくみあいをはじめる。
隆三が一番つよく、つぎが武史とテッちゃん。よわいのは裕三。相手のこしにしがみつくしか能がない。その裕三にも勘太はあっさり押し出される。
強いもの、弱いもの。はじめからみんなわかっている。三、四日であきてしまった。
「けしょうまわしをつけよう」
とテッちゃんがいいだした。
「なんや、それ」
「どひょういりのとき、つけるねん」
春休みにはいった日曜日、武史の家にみんながあつまった。ユキちゃん、タミちゃんもやってきた。
「女はどひょうに上がられへん」
「そんなんおかしい」
タミちゃんに目をむかれ、武史は、
「けしょうまわしを作るのはええやろ」
とおさめた。
「栃錦はどんなけしょうまわしやった」
「おぼえてへん」
「イッ子せんせいに見せよ、とおもたのに」
ぶつぶついっている勘太をしりめに、みんな思い思いにかきだしている。
テッちゃんは野球の雑誌をめくって、巨人軍の川上哲二。武史はチャップリン、隆三は大阪城、裕三はかぶと。タミちゃんはタカラヅカのスター、ユキちゃんは美空ひばり。
登が弓をひくアトムをかいているのを見て、勘太は夢でみたアトム号ロケットを思いだした。
(アトムがイッ子せんせいの里に行くから、クラタせんせいがでてくるんや)
勘太は富士山の上を飛ぶアトムをかいた。
みんなのけしょうまわしができたところで、どひょういり。いっせいにしこをふむ。
「ヨイショ」
ラジオは栃錦の優勝をつたえている。              (明日に続く)

 

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