怒りを込めて振り返れ《汚染水処理、100年後を視野に》一之瀬明(年金生活者)

処理水海洋放出を伝える福島民報

今なお増え続ける福島第一原発の汚染水。これといった対策がない中で政府は2年後に海中放棄すると決めた。
勿論漁師や近隣諸国から批判が上がっていることは周知のとおりだ。そんな中、2021年12月7日付朝日新聞(Web版)によると、福島大・柴崎教授が次のような提案をした。
「原発敷地の地中に総延長約4キロの広域遮水壁を造り、地下水を集める井戸を複数設置する代替案を提案。「第一原発敷地だけでなく周辺も含めて地質や地下水の実態を調査したうえで、100年後を視野に入れた地下水流入対策を早期に実施すべきだ」 “怒りを込めて振り返れ《汚染水処理、100年後を視野に》一之瀬明(年金生活者)” の続きを読む

宿場町シリーズ《西国街道・昆陽(こや)宿》文・写真 井上脩身

歴史家・頼山陽が好んだ伊丹酒
――漢詩に酔い心地をうたう――

頼山陽像(ウィキベテアより)

 西国街道・昆陽宿は伊丹の酒蔵の街の西約2キロのところに位置し、酒好きたちの宿泊地や休憩所として利用された。『日本外史』を書いて尊王攘夷派の志士たちに強く思想的影響を及ぼした頼山陽(1780~1832)もその一人だ。故郷の広島から京都に戻る途中、昆陽宿に立ち寄り、六甲の山並みがかもすおだやかな風景を詩によみ、伊丹で心地よく酒をたのしんだという。なかでも「剣菱」が山陽好みの銘柄だった。剣菱は私も大好きだ。燗酒が飲みたくなる晩秋のある昼さがり、わたしは山陽の足跡をたどろうと、昆陽宿から伊丹の酒蔵街へと歩いた。 “宿場町シリーズ《西国街道・昆陽(こや)宿》文・写真 井上脩身” の続きを読む

読切連載アカンタレ勘太 11-2《板イカダのそうなん》文・挿画  いのしゅうじ

勘太のおにいさんの淳吉が「日本の秘境」という本をひらいた。

おかあさんに買ってもらったばかり。めずらしい風景の写真がもりだくさんだ。

淳吉の目はイカダの写真にクギづけ。題は「瀞(とろ)峡の筏(いかだ)下り」。瀞の岩と岩のあいだをイカダがぬっていく。

瀞峡は近畿南部の山奥の深い谷だ。イカダ師はあら波をものともしない、とかいてある。 “読切連載アカンタレ勘太 11-2《板イカダのそうなん》文・挿画  いのしゅうじ” の続きを読む

読切連載アカンタレ勘太 11-1《しんぞうやぶりの丘》文・挿画  いのしゅうじ

「スクーターが入った」

テッちゃんがこうふんしている。

「ラビットや。かっこええねん」

ラビットスクーターはさいきん、都会ではやりだした。クスリの会社につとめているテッちゃんのおとうさんは新しがりやなのだ。

勝がテッちゃんの机の前にたった。

「うちはバタコや」

勝の家のまわりは昔からスギの山。勝のおとうさんは材木の運送をはじめようと、中古のオート三輪を知り合いから安く買いとった。

と勝はいう。 “読切連載アカンタレ勘太 11-1《しんぞうやぶりの丘》文・挿画  いのしゅうじ” の続きを読む

連載コラム・日本の島できごと事典 その50《日本列島の誕生》渡辺幸重

パンゲア大陸

 気の遠くなりそうな古い時代からの地球の歴史を知り、大地の動きを実際に目で確かめられる地域として認定されたのが「ジオパーク」で、国内には日本ジオパークが44地域あり、そのうちの9地域がユネスコ世界ジオパークになっています(20219月現在)。ジオパークにはジオサイトという観察拠点がありますが、島や岩礁が多く含まれています。それは、火山活動など地球内部とつながる活動が表に現れ、島や岩礁として露出しているところが多いからです。

 日本列島はかつてユーラシア大陸の一部でしたが、約3,0002,000万年前に大陸の一部が分離し始め、湖状の日本海の原形が誕生し、さらに分離が進行して約1,500万年前に日本海と日本列島が形作られたといわれています。実は、日本列島が大陸の一部だったことを証明する場所が島根県の隠岐諸島にあります。隠岐の島後でみられる「隠岐片麻岩の露頭」がそれです。地底の圧力と熱によってできた約25,000万年前の変成岩で、その頃は地球上にはパンゲアと呼ばれる一つの大きな大陸がありました。大陸移動説はご存知だと思いますが、地殻変動によって大陸は少しずつ分裂していき、ユーラシア大陸ができ、その端に日本列島になった陸地があったのです。地下深くで生成された岩石はプレート活動と約600万年前の火山活動による隆起で隠岐諸島・島後の隠岐片麻岩として露出し、いま私たちの目の前にあります。

 隠岐諸島は、ユーラシア大陸と一体だった時代、湖の底だった時代、深い海底にあった時代、火山活動によって隆起した時代、島根半島と陸続きになった時代を経て約1万年前に地球の温暖化による海面の上昇で現在のような諸島を形づくりました。実に千変万化の島と言えます。2008年の初夏、隠岐で約2,000万年前の地層からワニの歯の化石が発見されました。その頃、隠岐はワニが棲むような湖の環境であったのです。すなわち、日本列島が大陸から離れ始め、湖ができ、その後日本海になったということを証明しています。

 各地のジオパークは地球のダイナミックな歴史を教えてくれます。島や岩礁はその証人なのです。

原発を考える《犠牲強要の汚染処理水海洋放出》文 井上脩身

福島第1原発の敷地いっぱいに並ぶ汚染処理水貯蔵タンク(ウィキベテアより)

岸田文雄首相は衆院選で与党が過半数の議席を獲得したのを受け、安倍政権が行ってきた原発政策を進める方針を明らかにした。当然、前政権時代の課題も岸田政権の肩にのしかかるが、そのひとつは福島第1原発の汚染処理水問題だ。菅政権下の2021年4月、2年後をメドに海洋放出することに決定しており、岸田首相は自らの政権下で放出を実施するものとみられる。しかし、放出される放射性物質トリチウムの危険性を指摘する声は根強くあり、地元漁業者は風評被害を懸念、あくまで反対のかまえだ。そもそも原発事故が起きたから処理水問題が出現しでたのである。事故で地元漁業者に塗炭の苦しみを押し付け、さらに処理水放出で少なくとも風評被害を及ぼすというであれば、理不尽な犠牲強要施策というほかない。 “原発を考える《犠牲強要の汚染処理水海洋放出》文 井上脩身” の続きを読む