Lapiz Opinion《戦争をする国」へ突き進む日本政府になぜ国民は沈黙するのか-2》渡辺幸重

-「重要土地等調査規制法」成立にみる日本社会の病根-

◎国民の“知る権利”を奪い、思想・良心の自由や表現の自由を制約

独裁者・国家(軍国)主義者はあいまいな法律を恣意的に操ることで民衆の権利を奪い、弾圧する。今回の重要土地等調査規制法はその典型である。刑罰に直結する「注視区域」「重要施設」「監視の対象者」「調査される事項の範囲」「調査の主体」「阻害行為」などあらゆる法概念があいまいで、これらの内容は基本方針として閣議で決めるという。このままでは日本国憲法と国際人権規約に反して基本的人権を侵害する運用がなされ、自衛隊基地や米軍基地、原発などの実態がベールに覆われる事態になるだろう。
この法律の成立前から297の市民団体の反対声明をはじめ法曹界や野党、メディアなどから反対や疑問の声が挙がり、成立後は抗議と廃止を求める運動が続いている。東京弁護士会の「『重要土地等調査規制法』強行可決に抗議し、同法の廃止を求める会長声明」(2021年06月24日)は次の①~④のような「重大な問題」を指摘している。
①「注視区域」「特別注視区域」「重要施設」の指定基準、「重要施設」及び国境離島等の「機能を阻害する行為」とその「明らかなおそれ」の判断基準が明確でなく、それが政府の裁量で決められるため、国民の権利自由が不当に制約されるおそれがある
②内閣総理大臣の権限によって、不明確な要件のもとで地方公共団体の長による調査・報告等がなされ、土地・建物利用者に報告義務や資料提供義務を課すことは、土地・建物利用者の思想・良心の自由(憲法第19条)、表現の自由(憲法第21条)、プライバシー権(憲法第13条)を侵害するおそれがあり、また、刑罰法規の明確性を欠く点において罪刑法定主義(憲法第31条)に反する疑いが強い
③内閣総理大臣が、不明確な要件のもとで注視区域内の土地・建物利用者が自らの土地・建物を「機能を阻害する行為」に供し又は供するおそれがあると認めるときに、刑罰の制裁の下、勧告及び命令を行い、当該土地・建物の利用を制限することは、土地・建物利用者の財産権(憲法第29条)を侵害するおそれがあり、罪刑法定主義違反の疑いもある
④以上のような規制の結果、例えば自衛隊や米軍の施設の周辺において、施設の拡充や施設利用の在り方について異議を表明したり抗議活動をしたりすることに対し、注視区域内の土地・建物利用者が不明確な要件のもとで利用制限や規制、刑罰を科せられることになりかねない。これは、思想・良心の自由や表現の自由を大きく制約し、ひいては民主主義の基盤をも危うくする
最後に声明は、「本法の強行可決に強く抗議し、本法の速やかな廃止を求めるとともに、恣意的な運用を阻止するために引き続き活動する決意である」と結んでいる。 “Lapiz Opinion《戦争をする国」へ突き進む日本政府になぜ国民は沈黙するのか-2》渡辺幸重” の続きを読む

Lapiz Opinion《戦争をする国」へ突き進む日本政府になぜ国民は沈黙するのか-1》渡辺幸重

-「重要土地等調査規制法」成立にみる日本社会の病根-

選挙ドットコムから

日本政府のコロナ対策への“無能無策”ぶりに日本国民は怒りを超えて諦めの境地に追いやられているなか、裏で憲法改正(改悪)や軍備増強が急ピッチで進んでいる。国会閉幕日の6月16日の未明には参議院で「重要土地等調査規制法案(重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案)」が強行採決された。これは特別秘密保護法や安保法制などと同じように日本憲法の平和理念を無視した戦争への道を進む法整備の一環である。なぜ、メディアはきちんと報道もせず、国民は無関心なのか。なぜ、日本社会は戦前と同じ道をたどろうとしているのか。このままでいいはずがない。 “Lapiz Opinion《戦争をする国」へ突き進む日本政府になぜ国民は沈黙するのか-1》渡辺幸重” の続きを読む

夏の千夜一夜物語《子午線の通る町・明石から淡路島航路》片山通夫

淡路島へは明石海峡大橋を車かバスで渡るかフェリーで渡ることができる。フェリーは淡路ジェノバラインという船会社が運航している。たったの13分ほどの船旅である。しかしあの明石海峡大橋をくぐる航路でもある。

夏の千夜一夜物語《七夕(たなばた)》片山通夫

七夕まつり

今年も夏が来た。夏至を過ぎると本格的な夏が来る。最もわが国では梅雨と重なってまだじめじめした空模様が続いている。沖縄などでは梅雨が明けている年もあるが今年は来月の3日位という予報だが、これはあてにならない。この梅雨入りや梅雨明けほどあてにならない予報はない。

しかし夏至が過ぎて夏に至る時期なのだ。7月といえば七夕祭。しかし新暦でいうものだからたいてい梅雨のさなかで星は見えない。変なところで合理的で新暦に直してしまうものだからなかなか季節とマッチしない。

本来 七夕(たなばた/しちせき、棚機)は、中国大陸・日本・韓国・台湾・ベトナムなどにおける節供・節日の一つ。五節句の一つにも数えられる。星祭り(ほしまつり)ともいう。(七夕節句とはいうが、二十四節気に関連する節月ではなく、暦月の)旧暦7月7日の夜のことで、日本ではお盆(旧暦7月15日前後)との関連がある年中行事であったが、明治改暦(日本におけるグレゴリオ暦導入)以降、お盆が新暦月遅れの8月15日前後を主に行われるようになったため関連性が薄れた。(この項ウイキエディア)

日本でも各地で七夕祭りが開催される。織姫と牽牛の恋物語が有名だ。

仙台などで行われている七夕まつりは新暦で8月7日頃に催される。

                           この項明日に続く

怒りを込めて振り返れ《一体何なのだ?この政府。》一之瀬 明

尾身氏ほか専門家が「やるなら具体的対策を」と言っているのに、精神論と抽象論しか語れない。「壁を乗り越える努力を世界に発信していく(スガ)」「繋がりや絆の再生に貢献、世界を1つに(橋本)」「安全安心に開催できると信じている、一段努力する必要がある(山下)」まさにカルト以外何と呼ぶ?
酒類販売、いや禁止・・・。観客一万人、いや関係者入れて2万人、外国選手団から感染者・・・・無言。
一体何なのだ?この政府。

書籍紹介《「消えたヤマと在日コリアン」を読んで》片山通夫

「消えたヤマと在日コリアン」 ー丹波篠山から考えるー

細身和之 松原薫 川西なを恵 著 岩波ブックレット No.1046  定価(本体620円+税)

まず筆者の簡単な経験を述べたい。それがこの書を筆者が読む「読み方」の説明になると思うからである。1999年秋に初めてサハリンへ行った。「その島にとり残された」朝鮮人が多数いると聞いたからだった。筆者がいわゆる「朝鮮人問題」を知り取材を始めたのはサハリン残留朝鮮人が最初だった。
私たちは今なお、いやここ数年ますますヘイト問題に直面する。原因等は様々いわれているが、本旨とは違うのでここでは書かない。しかし本書からはその遠因を知ることができると思うので、本書をそんな角度からも読まれることを強くお勧めしたい。

 

 

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Lapiz2021夏号 Vol.38 最近の記事紹介

最近の記事
ヘッダー写真 breath of CITY 北博文 から

《breath of CITY 》北博文
昭和の引き出し《記憶と希望 京都国際高校 2》元民族新聞記者 鄭容順2021-06-15
宿場町シリーズ《有馬街道、小浜宿》文、写真 井上脩身2021-06-16
連載コラム・日本の島できごと事典 その28《要塞地帯法》渡辺幸重2021-06-17原発を考える《思考停止の国民が許す》山梨良平2021-06-18
三匹が撮る!《マスクのいらなかった時代のフォト・ストーリー》
Lee E-sik2021-06-19
三匹が撮る!《旧川上炭鉱のイメージ》Dyu Men Su2021-06-20
夏の千夜一夜物語《夏至》片山通夫2021-06-21
匹が撮る!《再開された北朝鮮帰還・1971年》片山通夫2021-06-22
読切連載アカンタレ勘太 9《けしょうまわし》文・挿画  いのしゅうじ2021-06-23
切連載アカンタレ勘太 9-2《栃若すもう大会》文・挿画  いのしゅうじ2021-06-24

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読切連載アカンタレ勘太 9-2《栃若すもう大会》文・挿画  いのしゅうじ

栃若すもう大会

イッ子せんせいが北島八百屋に顔をみせた。
「エイちゃん、七夕まつりをやったでしょ。おすもうはできないかしら」
栄三はけげんな顔だ。
「みんなでけしょうまわしを作ったそうよ」
きのう、ユキちゃんとタミちゃんがイッ子せんせいの下宿にやってきて、けしょうまわしを見せてくれた、とせんせいはいう。
「すもうの大会ですか?」
「うん、女の子もさんかできるといいわ」
栄三はその日のうちに「七夕まつり実行委員会」のメンバーをあつめた。
「おんな? そらあかん。すもうは男のせかいや」
栄三はねばった。
「おおずもうみたいに土をもりあげるのやない。じめんになわをうめこむだけ」
すったもんだしたが、
「男女平等の時代や」
女性のさんかをみとめ、お宮さんですもう大会をひらくことになった。
4月はじめ、「栃若桜花すもう大会」が開かれた。
広場にどひょうがつくられた。ゴザに50人くらいがすわっている。
その一番まえで正座しているのはイッ子せんせい。ちかくの着物すがたの男性が気になっている。ピリピリしたするどい目なのだ。
しゅつじょうする力士は子どもが30人。このなかに目の見えない登もいる。女の子はユキちゃん、タミちゃんら6人。ほかに中高校生や働いている若ものが10人。
みんな、しめこみ代わりにへこ帯をこしにまいている。
行司は栄三。剣道着にみをつつんでいる。
勘太はさいしょのとりくみに出ることになった。
相手は6年生の勝也。入学したときからいじわるしてきたあの勝也だ。勘太はヘビににらまれたカエル。立ちあう前からいすくめられている。
「ハッケヨーイ」
軍配がかえったしゅんかん、勘太はぐんとかつぎあげられ、どひょうの外にぼーんとほうりだされた。
つぎはユキちゃんの出番。相手はやはり6年生の女の子。がっこう一のおてんばだ。ユキちゃんの顔がひきつっている。立ち上がって1びょうもしないうちに、ユキちゃんはぱっとなげとばされた。
ユキちゃんは勘太のま上におちてきた。さけようとした勘太。顔が上下にひっくりかえっている。
「まるでろくろ首ね」
イッ子せんせいがあとでくすくすわらった。
よく日。
がっこうにこうぎの電話がかかった。
「女をどひょうに入れるとはけしからん」
校長室にイッ子せんせいが呼ばれた。
「校長としてあやまっておきました」
首をうなだれるイッ子せんせいだ。。
数年のち栃錦、若乃花が横綱になり、栃若時代をむかえる。やがて、女性のすもう大会もひらかれる。
とは、校長せんせいは思いもしなかった。
栃若すもう大会はこの一回でおわる。
(せんせい、悔しかったやろなあ)
イッ子せんせいの先見の明におどろく勘太。
(ひょっとしてクラタせんせいのアイデアかな?)
勘太の心の中で、クラタせんせいがチラチラしている。            (この回完)