びえんと《五七五に託すハンセン病患者の叫び 上》Lapiz 編集長 井上脩身

~不条理な強制隔離政策のなかで~

北條民雄著『いのちの初夜』の表紙

11月末、映画『一人になる――医師小笠原登とハンセン病強制隔離政策』を見た。ハンセン病患者に対する強制隔離に反対しつづけた小笠原医師(1888~1970)の生涯を通して、らい予防法が引き起こした差別と偏見を訴える映画である。私はたまたまハンセン病患者たちの苦しみや怒りを詠んだ短歌、俳句、川柳を収録した『訴歌』に目を通していた。さらに偶然ながら、ハンセン病患者であった作家、北條民雄の代表作『いのちの初夜』を読み終えたばかりであった。この小説は、主人公がハンセン病療養所に隔離された最初の日を書き表した作品だ。2001年、熊本地裁は、ハンセン病歴者は国の隔離政策の被害者であると認定、さらに患者の家族についても同地裁は2016年、人格権が侵害されたと判示した。だが、病苦者への差別・偏見は今なお根強い。『訴歌』のなかの川柳を通して、ハンセン病患者の思いに迫りたい。 “びえんと《五七五に託すハンセン病患者の叫び 上》Lapiz 編集長 井上脩身” の続きを読む

2021冬号Vol.40《巻頭言》Lapiz編集長 井上脩身

Lapiz2021Vol.40

最近、知り合いの70代の女性から意外な身の上話を聞きました。彼女の長女が高校1年生のとき、叔父夫婦から「息子のいいなずけになってほしい」との申し入れがあったというのです。1970年代半ばのことです。戦後30年がたってもまだ「いいなずけ」という風習が根をはっていたのか、と驚きました。彼女は「娘にだって結婚相手を決める権利があると思う」と断りました。断るのは当然ですが、「娘にだって」の言葉に私は引っかかりました。そして気づきました。秋篠宮家の長女眞子さんと小室圭さんとの結婚に対する多くの国民の思いは「眞子さんにも相手を選ぶ権利がある」ではないか、と。意識するとしないにかかわらず、「眞子さん以外にも選ぶ権利がある」との考えがこもっているように思えるのです。 “2021冬号Vol.40《巻頭言》Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

編集長が行く《広島原爆の日に西宮大空襲 002》文・写真 Lapiz編集長 井上脩身

置き去りの空襲被災者

国は1953年、恩給法の改正で旧軍人に対する恩給制度を復活させ、普通恩給(本人に対する給付)、扶助料(遺族への給付)の支給をはじめた。さらに「戦傷病者、戦没者遺族等援護法」を制定、軍属、準軍属や遺族、戦傷病者にも給付対象とすることになった。しかし、戦災に遭った普通の市民やその遺族は何らの援護の対象にもならず、何の補償も受けられなかった。「国土防衛の戦士」とされながら、民間の空襲被害者は置き去りにされたのである。(写真) “編集長が行く《広島原爆の日に西宮大空襲 002》文・写真 Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

編集長が行く《広島原爆の日に西宮大空襲 001》文・写真 Lapiz編集長 井上脩身

空襲を受けた地域を示す西宮市の地図(ウィキベテアより)

被災者に一切救済ない戦後
 広島に原爆が落とされた1945年8月6日、兵庫県西宮市南部が空爆され、その被災者の一人が大阪空襲訴訟の原告になっていたことを最近知った。同訴訟は「空襲の被害を受けたのは国に責任がある」として、被災者や遺族23人が2008年に訴えを提起。大阪訴訟に先立って07年に提訴された東京空襲訴訟の上告審で、最高裁は13年、「立法を通じて解決すべき問題」と判示し原告側を退けた。 “編集長が行く《広島原爆の日に西宮大空襲 001》文・写真 Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

原発を考える《原発事故がもたらす″心災″005》文 井上脩身

とのつながり持てる対策を

現在バイアスとこころの健康の変化について
(中学生のころ夏休みの宿題をいつやったか)
(日本全体=最初のころ20%、どちらかというと最初のころ20%、毎日ほぼ均等13%、どちらかというと終わりのころ23%、終わりのころ24%)
2016年=最初のころ12%、どちらかというと最初のころ23%、毎日ほぼ均等14%、どちらかというと終わりのころ36%、終わりのころ15%
双葉町の人は「どちらかというと終わりのころ」と「終わりのころ」が全国に比べ少し多い傾向があり、現在バイアスが強いことがわかる。
年賀状投函時期
(日本全体=12月25日以前39%、12月26日~31日44%、1月1日以降17%)
2016年=12月25日以前71%、12月26日~31日17%、1月1日以降12%
双葉町民は年賀状を出す時期が非常に早い傾向にある。同町では65歳以上の人は1月1日に着くように出すことの重要性を高く感じていることがうかがえる。

以上の調査の結果、岩崎氏は次のように結論づけた。
こころの減災に向けて①仮設住宅の長期滞在者や復興公営住宅滞在者へのケアの充実②被災前のつながりを保つことができる避難や、避難先での人と人とのつながりをつくるための取り組み③十分な賠償と災害の喪失への対策④現在バイアスの増大による健康への負の影響を防ぐ対策――が重要であることが明らかになった。

岩崎氏の調査で私は年賀状をいつ出すかを尋ねていることに意外感をおぼえた。このことが、被災者の心の在りようと何の関係もないと思ったからだ。しかし、よく考えてみると、1月1日に到着していることを重要視している人が多いのは、昔からのつながりを大事にする保守的な人が多いことを示しているといえるだろう。それだけに古里の喪失は心に大きな打撃を受けるのである。
岩崎氏のレポ―トから浮かび上がるのは、原発事故による放射能への恐怖、それに伴う避難によって起こる見えざるこころの病、あるいはストレスである。原発事故は地元の人たちのこころに災害をもたらしたことをデータで表した意義は決して小さくない。
岩崎レポートから浮かび上がるのは、震災が原発とからむと容易に回復しない″心災″になるということであろう。傷ついたこころをどうケアしていくのか。事故から10年以上たったが、政府と東電に被災者への「心あるある対応」が求められるのはいうまでもない。(完)

原発を考える《原発事故がもたらす″心災″004》文 井上脩身

双葉町民であることを隠す

ソーシャル・キャピタルについて
ここでは、人と人のつながりがこころの健康にどう関係するかを判断する。
避難先の住民との関係について
(交流機会があるか)
2016年=はい51%、いいえ46%
2017年=はい48%、いいえ47%
2019年=はい56%、いいえ41%
(祭りや一斉清掃などの地区の行事や会合に参加しているか)
2017年=はい51%、いいえ47%
2019年=はい56%、いいえ44%。
(双葉町民であることを隠したほうが良いと感じたことがあるか)
2016年=はい50%、いいえ40%
2017年=はい46%、いいえ=39%
2019年=はい42%、いいえ47%。
(近隣住民は双葉町民であることを知っているか)
2016年=はい63%、いいえ19%
2017年=はい63%、いいえ19%
2019年=はい57%、いいえ20%。
(ゴミだしで気が引ける思いをしたことがあるか)
2016年=はい21%、いいえ88%
2017年=はい10%、いいえ77%
2019年=はい9%、いいえ89%
(双葉町民であるために悪口を言われたり、いたずらをされたことがあるか)
2016年=はい13%、いいえ76%
2017年=はい3%、いいえ88%
2019年=はい3%、いいえ84%。

2016年の調査から避難先の住民との関係に関する質問を追加。避難先の住民と交流する機会や、地区の行事に参加する人の割合が少しずつ増加の傾向がみられる。しかし2019年になっても、40%が双葉町民であることを隠したほうが良いと感じており、避難先の住民と交流を持てていないことが確認された。避難先の住民との関係構築が重要な課題であることがわかる。

さまざまな喪失とこころの関係について
(震災前と比べた同居家族の人数の変化)
2013年=2人以上減少22%、1人減少20%、変化なし48%、増加10%
2016年=2人以上減少24%、1人減少21%、変化なし42%、増加14%
2019年=2人以上減少26%、1人減少24%、変化なし36%、増加14%。
震災前に比べ、多くは同居家族が3人以上減少している。
(震災前と比べた1人当たりの住居面積の変化)
2014年=40平方メートル以上減少21%、0~40平方メートル減少27%、変化なし4%、増加49%
2019年=40平方メートル以上減少16%、0~40平方メートル減少37%、変化なし6%、増加41%
震災前に比べ、住居面積が減る人が出る一方で、増えた人もほぼ同数いることがわかる。震災後に購入した持ち家に住むようになったことがうかがえる。

主観的健康感について
(震災前と比べた年収の変化)
2013年=100万円以上減少29%、0~100万円減少43%、変化なし5%、増加23%
2016年=100万円以上減少17%、0~100万円減少26%、変化なし25%、増加32%
2019年=100万円以上減少20%、0~100万円減少39%、変化なし11%、増加30%  (明日の続く)

 

原発を考える《原発事故がもたらす″心災″003》文 井上脩身

政府への信頼感なくす

(将来の町への帰還意思の変化)
2013年=戻る11%、まだ決められない30%、戻らない59%
2016年=戻る10%、まだ決められない18%、戻らない72%
2019年=戻る7%、まだ決められない23%、戻らない70%
(幸福度の変化)
(全国2019年、0~4点・27%、5~7点・48%、8点以上・25%)
2014年=0~4点・48%、5~7点・41%、8点以上・11%
2016年=0~4点・38%、5~7点・47%、8点以上・15%
2019年=0~4点・25%、5~7点・54%、8点以上・21%
(政府への信頼感の変化)
震災前=強くそう思う1%、そう思う36%、そう思わない48%、まったくそう思わない16%
2016年=強くそう思う1%、そう思う17%、そう思わない50%、まったくそう思わない32%
2019年=強くそう思う・1%、そう思う・25%、そう思わない・45%、まったくそう思わない・29%。
(福島県への信頼感)
震災前=強くそう思う7%、そう思う55%、そう思わない31%、まったくそう思わない7%
2017年=強くそう思う5%、そう思う45%、そう思わない37%、まったくそう思わない13%
2019年=強くそう思う5%、そう思う49%、そう思わない33%、まったくそう思わない13%。
(居住地区の隣人への信頼感の変化)
震災前=強くそう思う18%、そう思う62%、そう思わない18%、まったくそう思わない2%
2017年=強くそう思う3%、そう思う51%、そう思わない36%、まったくそう思わない10%
2019年=強くそう思う・3%、そう思う・52%、そう思わない・36%、まったくそう思わない・9%

幸福度低下の可能性

居住地や住居の変化についての分析
震災後、90%が3回以上転居し、16年の回答では40%の人が6回以上転居している。震災5年後から転居回数が増えていないのは、震災直後の公民館などでの短期的な滞在を転居回数に含まない「思い出しバイアス」が影響している可能性がある。
2013年から17年にかけ、県外に避難した人が県内に戻ってくる傾向がみられる一方で、2016年には多くの人が避難先で新たに住宅を購入している。
同居家族については、震災前は50%以上が3人以上いたが、震災後は減少。震災後、避難先で友人が増えておらず、社会的つながりが弱まっている可能性が示唆される。
世帯年収が減っており、就労支援が生活の安定のための重要な課題となっている。

健康状態の変化についての分析
(主観的健康)
震災前は75%が「良い」「大変良い」と評価していたが、2016年時点では23%程度に減少、その後の回復は緩やかである。
(こころの健康)
K6については、2013年から16年にかけてすこしずつ改善。日本全体と比べると高い値であり、回復には長い時間がかかる可能性がある。とくに仮設住宅に住む人のK6の値は13年から17年にかけて高くなっている。仮設住宅での生活がこころにストレスを与え、こころのストレスが大きいことで、次の住まいへの移動が困難になっている可能性がうかがえる。復興公営住宅に住む人のK6が高い傾向にあり、継続的なこころの健康サポートが重要であることが示唆される。

気持ちの変化についての分析
(将来の町への帰還意志)
2013年には6割が町に戻らないことを決めている。その後も、時間が経過するにつれその傾向が高まっている。
(幸福度)
全国では25~30%が8点以上で幸せと感じ、4点以下で不幸と感じている人は20~30%。双葉町では2014年、4点以下が5割で、震災によって幸福度が下がった可能性が示唆される。その後、幸福度の低い人は減り、19年時点では4点以下は3割となり、全国と変わらないまでに回復している。
(信頼感)
震災前は、4割が政府は信用できると考えていたが、2016年は2割になり、政府への信頼感が低下したことが確認できる。県に対する信頼感は政府より高いが、震災後は信用できるという人が減少。原発が安全と説明してきたことへの不信感や、事故対応による不信感を示している可能性がある。
隣人への信頼感については、震災前、8割が信用できるとしていたが、震災後は信用できると答えた人が減少。震災で離ればなれになり、新しい隣人をもつことで以前の隣人への信頼感が下がったことを示している。

複合的災害の複合的被害
震災後に同じ場所で生活再建が可能な場合が多い地震や津波などの自然災害に比べ、原発事故という人的災害によるこころの健康への影響は、より長期的で甚大である可能性がある。(明日に続く)

原発を考える《原発事故がもたらす″心災″002 》文 井上脩身

震災で同居家族が減少

以上の3点について考察するために、調査項目が以下のように設定された。
居住地、住居の変化について
(合計転居回数)
2016年=3~5回47%、6~8回41%
2017年=3~5回61%、6~8回30%2019年=3~5回55%、6~8回31%
(住居の福島県内割合)
2013年=56%、2014年60%、2017年=68%、2019年66%
(住居の種類)
震災前=賃貸住宅13%、持ち家86%
2013年=旧騎西高校1%、仮設住宅6%、賃貸住宅74%、持ち家(震災前と異なる、以下同)13%
2014年=仮設住宅12%、賃貸住宅50%、持ち家41%
2016年=仮設住宅6%、賃貸住宅19%、持ち家52%、復興住宅6%
2017年=仮設住宅3%、賃貸住宅17%、持ち家65%、復興住宅7%
2019年=仮設住宅0・1%、賃貸住宅11%、持ち家65%、復興住宅10%
(同居家族の人数)
震災前=1人暮らし21%、2人25%、3人19%、4人16%、5人以上19%
2013年=1人30%、2人35%、3人15%、4人10%、5人以上10%
2014年=1人21%、2人33%、3人22%、4人11%、5人以上11%
2016年=1人23%、2人34%、3人18%、4人10%、5人以上12%
2017年=1人25%、2人36%、3人17%、4人10%、5人以上12%
2019年=1人21%、2人40%、3人19%、4人10%、5人以上10%。

知り合い、友人の変化について
(避難を通して知り合った双葉町出身の近隣住民世帯数)
2013年=20世帯以上10%、10~19世帯4%、6~9世帯8%、3~5世帯15%、1~2世帯12%、いない45%、その他
2014年=20世帯以上8%、10~19世帯5%、6~9世帯6%、3~5世帯10%、1~2世帯19%、いない51%、その他
(双葉町で知り合いだった近隣住民世帯数)
2013年=20世帯以上7%、10~19世帯4%、6~9世帯8%、3~5世帯13%、1~2世帯23%、いない45%
2014年=20世帯以上1%、10~19世帯5%、6~9世帯9%、3~5世帯13%、1~2世帯26%、いない47%

近隣の知り合い、友人の変化について
(避難先に震災前からの知人がいる)
2016年=43%、2017年=37%、2019年=47%
(避難先で新しくできた双葉町の友人がいる)2016年=44%、2017年=33%、2019年=31%。
(避難先で新しくできた双葉町以の出身の友人がいる)
2016年=36%、2017年=31%、2019年=47%
(新しくできた避難先住民の友人がいる)
2016年=43%、2017年=34%、2019年=37%。

悪化する主観的健康感

(世帯年収の変化)
震災前=100万円未満7%、100万円~200万円未満11%、200万円~300万円未満18%、300万円~400万円未満18%、400万円~600万円未満22%、600万円~800万円未満13%、800万円以上11%
2013年=100万円未満17%、100万円~200万円未満21%、200万円~300万円未満18%、300万円~400万円未満15%、400万円~600万円未満13%、600万円~8040万円未満11%、800万円以上5%
2019年=100万円未満19%、100万円~200万円未満19%、200万円~300万円未満22%、300万円~400万円未満15%、400万円~600万円未満13%、600万円~800万円未満11%、800万円以上9%

健康について
(主観的健康感の変化)
震災前=大変良い13%、良い64%、どちらともいえない19%、悪い4%
2016年=大変良い1%、良い22%、どちらともいえない37%、悪い31%、大変悪い9%
2019年=大変良い1%、良い25%、どちらともいえない44%、悪い31%、大変悪い9%
(健康状態指標=K6)
※K6は健康状態を示す指標=神経過敏に感じたか、絶望的だと感じたか、そわそわし落ち着きがなくなったか、気が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じたか、何をするにも骨折りだと感じたか、自分は価値のない人間だと感じたか――の6項目について、「全くない」0、「少しだけ」1、「ときどき」2、「たいてい」3、「いつも」4とし、5点未満は「問題なし」、5~10点未満「要観察」(こころにストレスが重なっている)、10点以上「要注意、要受診」(こころが疲労している)と判定。
(日本全体0~4・71%、5~9・19%、10以上・10%)
2013年=0~4・29%、5~9・35%、10以上・40%
2016年=0~4・25%、5~9・30%、10以上・35%
2019年=0~4・36%、5~9・35%、10以上・29%
(仮設住宅住民のK6の変化)
2013年=0~4・13%、5~9・47%、10~12・17%、13以上・23%
2017年=0~4・13%、5~9・12%、10~12・32%、13以上・43%
(2019年における住宅種類別K6の分布)
持ち家(震災前と異なる)=0~4・38%、5~9・34%、10以上・28%
賃貸・仮設住宅=0~4・40%、5~9・30%、10以上・30%
親戚の家=0~4・38%、5~9・20%、10以上・42%
復興公営住宅=0~4・24%、5~9・31%、10以上・45%(明日に続く)

原発を考える《原発事故がもたらす″心災″001 》文 井上脩身

~実証経済学から減災策探る~

  1. 『福島原発事故とこころの健康――実証経済学で探る減災・復興の鍵』

    福島第1原発事故によって避難暮らしを余儀なくされた人たちは、さぞ精神的に辛い思いをしたであろうとはだれもが思う。長い間住み慣れた家を失い、仕事を失い、温もりある家庭を失い、そして古里を失った被災地の人たち。ニッセイ基礎研究所研究員の岩崎敬子氏がその心の変化に焦点を当て、5回にわたって同原発の立地自治体である福島県双葉町の住民アンケートを実施。その結果を分析したレポートが、『福島原発事故とこころの健康――実証経済学で探る減災・復興の鍵』として、日本評論社から出版された。被災者へのアンケート自体はこれまでも政府やマスコミ各社が行っているが、岩崎レポートは「こころの減災」をキーワードに、被災者の心の内部に迫っている。 “原発を考える《原発事故がもたらす″心災″001 》文 井上脩身” の続きを読む

宿場町シリーズ《山陰道・樫原(かたぎはら)宿 下》文・写真 井上脩身

江戸の面影のこす本陣建物

明智川の異名がある山陰道沿いの川

7月末、35度を超える猛暑のなか、樫原を訪ねた。桂駅のすぐそばに大宮社という小さな神社がある。松尾七社の一社とされ、ここから西に向かって幅5メートルの道をすすむ。旧山陰道である。道沿いに小畠川という細い川が流れている。「明智川」という異名がある。あるいは亀山(現亀岡)から老ノ坂を越えた明智光秀が、この川のあたりで「敵は本能寺にあり」とゲキをとばしたのかもしれない。 “宿場町シリーズ《山陰道・樫原(かたぎはら)宿 下》文・写真 井上脩身” の続きを読む