勝のいかりがおさまらない。
「勘太がかわいそうやないか」
「ぼく、気にしてへん」
勘太はいつものようにもぞもぞという。
「勝のタイガース好きにはびっくりや」
隆三は勝のきげんをとるように言った。 “読切連載アカンタレ勘太10-2《ラインダンス》 文・画 いのしゅうじ” の続きを読む
読切連載アカンタレ勘太10-1 《阪神巨人どうま戦》 文・画 いのしゅうじ
阪神巨人どうま戦
テッちゃんと勝がけんかをしている。
3年生になって、新しい教室に入るなり、テッちゃんが、
「巨人の川上や」
と、けしょうまわしを机に広げたのがきっかけだ。 “読切連載アカンタレ勘太10-1 《阪神巨人どうま戦》 文・画 いのしゅうじ” の続きを読む
三匹が撮る!《サハリンが樺太と呼ばれていた時代》Lee E-sik
三匹が撮る!《炭鉱町のイメージ》Dyu Men Su
編集長が行く《広島原爆の日に西宮大空襲 002》文・写真 Lapiz編集長 井上脩身
置き去りの空襲被災者
国は1953年、恩給法の改正で旧軍人に対する恩給制度を復活させ、普通恩給(本人に対する給付)、扶助料(遺族への給付)の支給をはじめた。さらに「戦傷病者、戦没者遺族等援護法」を制定、軍属、準軍属や遺族、戦傷病者にも給付対象とすることになった。しかし、戦災に遭った普通の市民やその遺族は何らの援護の対象にもならず、何の補償も受けられなかった。「国土防衛の戦士」とされながら、民間の空襲被害者は置き去りにされたのである。(写真) “編集長が行く《広島原爆の日に西宮大空襲 002》文・写真 Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む
編集長が行く《広島原爆の日に西宮大空襲 001》文・写真 Lapiz編集長 井上脩身
被災者に一切救済ない戦後
広島に原爆が落とされた1945年8月6日、兵庫県西宮市南部が空爆され、その被災者の一人が大阪空襲訴訟の原告になっていたことを最近知った。同訴訟は「空襲の被害を受けたのは国に責任がある」として、被災者や遺族23人が2008年に訴えを提起。大阪訴訟に先立って07年に提訴された東京空襲訴訟の上告審で、最高裁は13年、「立法を通じて解決すべき問題」と判示し原告側を退けた。 “編集長が行く《広島原爆の日に西宮大空襲 001》文・写真 Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む
小田 真のドローンの世界《夏》小田 真
原発を考える《原発事故がもたらす″心災″005》文 井上脩身
人とのつながり持てる対策を
現在バイアスとこころの健康の変化について
(中学生のころ夏休みの宿題をいつやったか)
(日本全体=最初のころ20%、どちらかというと最初のころ20%、毎日ほぼ均等13%、どちらかというと終わりのころ23%、終わりのころ24%)
2016年=最初のころ12%、どちらかというと最初のころ23%、毎日ほぼ均等14%、どちらかというと終わりのころ36%、終わりのころ15%
双葉町の人は「どちらかというと終わりのころ」と「終わりのころ」が全国に比べ少し多い傾向があり、現在バイアスが強いことがわかる。
年賀状投函時期
(日本全体=12月25日以前39%、12月26日~31日44%、1月1日以降17%)
2016年=12月25日以前71%、12月26日~31日17%、1月1日以降12%
双葉町民は年賀状を出す時期が非常に早い傾向にある。同町では65歳以上の人は1月1日に着くように出すことの重要性を高く感じていることがうかがえる。
以上の調査の結果、岩崎氏は次のように結論づけた。
こころの減災に向けて①仮設住宅の長期滞在者や復興公営住宅滞在者へのケアの充実②被災前のつながりを保つことができる避難や、避難先での人と人とのつながりをつくるための取り組み③十分な賠償と災害の喪失への対策④現在バイアスの増大による健康への負の影響を防ぐ対策――が重要であることが明らかになった。
岩崎氏の調査で私は年賀状をいつ出すかを尋ねていることに意外感をおぼえた。このことが、被災者の心の在りようと何の関係もないと思ったからだ。しかし、よく考えてみると、1月1日に到着していることを重要視している人が多いのは、昔からのつながりを大事にする保守的な人が多いことを示しているといえるだろう。それだけに古里の喪失は心に大きな打撃を受けるのである。
岩崎氏のレポ―トから浮かび上がるのは、原発事故による放射能への恐怖、それに伴う避難によって起こる見えざるこころの病、あるいはストレスである。原発事故は地元の人たちのこころに災害をもたらしたことをデータで表した意義は決して小さくない。
岩崎レポートから浮かび上がるのは、震災が原発とからむと容易に回復しない″心災″になるということであろう。傷ついたこころをどうケアしていくのか。事故から10年以上たったが、政府と東電に被災者への「心あるある対応」が求められるのはいうまでもない。(完)
原発を考える《原発事故がもたらす″心災″004》文 井上脩身
双葉町民であることを隠す
ソーシャル・キャピタルについて
ここでは、人と人のつながりがこころの健康にどう関係するかを判断する。
避難先の住民との関係について
(交流機会があるか)
2016年=はい51%、いいえ46%
2017年=はい48%、いいえ47%
2019年=はい56%、いいえ41%
(祭りや一斉清掃などの地区の行事や会合に参加しているか)
2017年=はい51%、いいえ47%
2019年=はい56%、いいえ44%。
(双葉町民であることを隠したほうが良いと感じたことがあるか)
2016年=はい50%、いいえ40%
2017年=はい46%、いいえ=39%
2019年=はい42%、いいえ47%。
(近隣住民は双葉町民であることを知っているか)
2016年=はい63%、いいえ19%
2017年=はい63%、いいえ19%
2019年=はい57%、いいえ20%。
(ゴミだしで気が引ける思いをしたことがあるか)
2016年=はい21%、いいえ88%
2017年=はい10%、いいえ77%
2019年=はい9%、いいえ89%
(双葉町民であるために悪口を言われたり、いたずらをされたことがあるか)
2016年=はい13%、いいえ76%
2017年=はい3%、いいえ88%
2019年=はい3%、いいえ84%。
2016年の調査から避難先の住民との関係に関する質問を追加。避難先の住民と交流する機会や、地区の行事に参加する人の割合が少しずつ増加の傾向がみられる。しかし2019年になっても、40%が双葉町民であることを隠したほうが良いと感じており、避難先の住民と交流を持てていないことが確認された。避難先の住民との関係構築が重要な課題であることがわかる。
さまざまな喪失とこころの関係について
(震災前と比べた同居家族の人数の変化)
2013年=2人以上減少22%、1人減少20%、変化なし48%、増加10%
2016年=2人以上減少24%、1人減少21%、変化なし42%、増加14%
2019年=2人以上減少26%、1人減少24%、変化なし36%、増加14%。
震災前に比べ、多くは同居家族が3人以上減少している。
(震災前と比べた1人当たりの住居面積の変化)
2014年=40平方メートル以上減少21%、0~40平方メートル減少27%、変化なし4%、増加49%
2019年=40平方メートル以上減少16%、0~40平方メートル減少37%、変化なし6%、増加41%
震災前に比べ、住居面積が減る人が出る一方で、増えた人もほぼ同数いることがわかる。震災後に購入した持ち家に住むようになったことがうかがえる。
主観的健康感について
(震災前と比べた年収の変化)
2013年=100万円以上減少29%、0~100万円減少43%、変化なし5%、増加23%
2016年=100万円以上減少17%、0~100万円減少26%、変化なし25%、増加32%
2019年=100万円以上減少20%、0~100万円減少39%、変化なし11%、増加30% (明日の続く)
原発を考える《原発事故がもたらす″心災″003》文 井上脩身
政府への信頼感なくす
(将来の町への帰還意思の変化)
2013年=戻る11%、まだ決められない30%、戻らない59%
2016年=戻る10%、まだ決められない18%、戻らない72%
2019年=戻る7%、まだ決められない23%、戻らない70%
(幸福度の変化)
(全国2019年、0~4点・27%、5~7点・48%、8点以上・25%)
2014年=0~4点・48%、5~7点・41%、8点以上・11%
2016年=0~4点・38%、5~7点・47%、8点以上・15%
2019年=0~4点・25%、5~7点・54%、8点以上・21%
(政府への信頼感の変化)
震災前=強くそう思う1%、そう思う36%、そう思わない48%、まったくそう思わない16%
2016年=強くそう思う1%、そう思う17%、そう思わない50%、まったくそう思わない32%
2019年=強くそう思う・1%、そう思う・25%、そう思わない・45%、まったくそう思わない・29%。
(福島県への信頼感)
震災前=強くそう思う7%、そう思う55%、そう思わない31%、まったくそう思わない7%
2017年=強くそう思う5%、そう思う45%、そう思わない37%、まったくそう思わない13%
2019年=強くそう思う5%、そう思う49%、そう思わない33%、まったくそう思わない13%。
(居住地区の隣人への信頼感の変化)
震災前=強くそう思う18%、そう思う62%、そう思わない18%、まったくそう思わない2%
2017年=強くそう思う3%、そう思う51%、そう思わない36%、まったくそう思わない10%
2019年=強くそう思う・3%、そう思う・52%、そう思わない・36%、まったくそう思わない・9%
幸福度低下の可能性
居住地や住居の変化についての分析
震災後、90%が3回以上転居し、16年の回答では40%の人が6回以上転居している。震災5年後から転居回数が増えていないのは、震災直後の公民館などでの短期的な滞在を転居回数に含まない「思い出しバイアス」が影響している可能性がある。
2013年から17年にかけ、県外に避難した人が県内に戻ってくる傾向がみられる一方で、2016年には多くの人が避難先で新たに住宅を購入している。
同居家族については、震災前は50%以上が3人以上いたが、震災後は減少。震災後、避難先で友人が増えておらず、社会的つながりが弱まっている可能性が示唆される。
世帯年収が減っており、就労支援が生活の安定のための重要な課題となっている。
健康状態の変化についての分析
(主観的健康)
震災前は75%が「良い」「大変良い」と評価していたが、2016年時点では23%程度に減少、その後の回復は緩やかである。
(こころの健康)
K6については、2013年から16年にかけてすこしずつ改善。日本全体と比べると高い値であり、回復には長い時間がかかる可能性がある。とくに仮設住宅に住む人のK6の値は13年から17年にかけて高くなっている。仮設住宅での生活がこころにストレスを与え、こころのストレスが大きいことで、次の住まいへの移動が困難になっている可能性がうかがえる。復興公営住宅に住む人のK6が高い傾向にあり、継続的なこころの健康サポートが重要であることが示唆される。
気持ちの変化についての分析
(将来の町への帰還意志)
2013年には6割が町に戻らないことを決めている。その後も、時間が経過するにつれその傾向が高まっている。
(幸福度)
全国では25~30%が8点以上で幸せと感じ、4点以下で不幸と感じている人は20~30%。双葉町では2014年、4点以下が5割で、震災によって幸福度が下がった可能性が示唆される。その後、幸福度の低い人は減り、19年時点では4点以下は3割となり、全国と変わらないまでに回復している。
(信頼感)
震災前は、4割が政府は信用できると考えていたが、2016年は2割になり、政府への信頼感が低下したことが確認できる。県に対する信頼感は政府より高いが、震災後は信用できるという人が減少。原発が安全と説明してきたことへの不信感や、事故対応による不信感を示している可能性がある。
隣人への信頼感については、震災前、8割が信用できるとしていたが、震災後は信用できると答えた人が減少。震災で離ればなれになり、新しい隣人をもつことで以前の隣人への信頼感が下がったことを示している。
複合的災害の複合的被害
震災後に同じ場所で生活再建が可能な場合が多い地震や津波などの自然災害に比べ、原発事故という人的災害によるこころの健康への影響は、より長期的で甚大である可能性がある。(明日に続く)