徒然の章《紅葉は忘れない》中務敦行

今年の夏は9月まで猛暑が続いた。「今年のもみじはアカンなあ」と思っていた。これまで、暑い夏の秋は葉が枯れたようになって、もみじの撮影はイマイチだった。今年はどうだろう?ところがどうして、きれいに色づきしかも長持ちしたのだ。
11月のなかばから、終わりまで週3~4日を撮影にあてたが、いずこもきれいだった。上越方面から始まり、11月いっぱい。12月になっても撮影可能なところがあると思われる。
「赤目四十八滝」ここの紅葉は山の上の方にある。流れの穏やかな水面に映ったもの。
「霧の朝」は11月の初め、早朝に発生した霧の中での撮影。
「法然院」は京都東山に寺はどこも、人出で賑わい人気の山門には行列ができたとか。
「金剛輪寺」は山内の池に映った紅葉をバックに、落ち葉が浮いてなお参拝者を魅了した。
「北野天満宮」は梅の花で有名だが、もみじ苑が人気だ。写真はコンクリートの通路に散った落ち葉が、踏み固められたもの。
その上に新しい落ち葉が・・・。 “徒然の章《紅葉は忘れない》中務敦行” の続きを読む

びえんと《朝鮮人虐殺画が表す人の悪魔性》文・Lapiz編集長 井上脩身

~関東大震災がもたらした歴史の闇~

新井勝紘氏著『関東大震災 描かれた朝鮮人虐殺を読み解く』の表紙

関東大震災から100年目にあたる今年、ひとつの本が上梓された。『関東大震災 描かれた朝鮮人虐殺を読み解く』。近・現代史を研究する新井勝紘氏が2021年に発見した『関東大震災絵巻』を中心に、被災した庶民がうわさに踊らされて残忍な行為をした事実を明らかにした一冊である。朝鮮人虐殺について、当時の子どもたちがかいた作文を収めた証言集を私はかつて読んだことがある。新井氏の本に掲載された絵に子どもの証言を重ねると、そこに浮かび上がるのは人間のかなしい悪魔性である。ロシアのプーチン大統領が行っているウクライナ戦争では、ロシア兵による虐殺や強姦が報告されている。仲よくすべき隣国の人々を集団で殺す群集心理の恐ろしさに、私はただただ暗然とする。 “びえんと《朝鮮人虐殺画が表す人の悪魔性》文・Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

編集長が行く《北海道・礼文島 02》Lapiz編集長井上脩身(文・写真共)

浸食がつくる穂高の島

『花の島に暮らす——北海道礼文島12カ月』(北海道新聞社)

 旅を終えて帰ってから知ったことだが、植物写真家でエッセイストの杣田美野里さんが1992年、36歳のとき東京から一家で礼文島に移住、2006年に『花の島に暮らす——北海道礼文島12カ月』(北海道新聞社)を著していたことを知った。

 同書によると、自然写真家の夫、生まれて3カ月の娘とともに礼文島にわたった。同書は、写真を中心に、エッセーを交えて四季折々の島の情景を表したもので、礼文島の風物詩が抒情的にえがき出されている。タイトルの通り、花々の写真を中心に構成されているが、私が注目したのは猫岩が写っている2点の写真だ。一つは海辺から捉え、もう一点は高台から写している。 “編集長が行く《北海道・礼文島 02》Lapiz編集長井上脩身(文・写真共)” の続きを読む

編集長が行く《北海道・礼文島 01》Lapiz編集長井上脩身(文・写真共)

文島で観測された金環日食(ウィキペディアより)

取り残されたメルヘンの島
 9月末、北海道北端の礼文島を訪ねた。私が小学校4年生の教科書に、礼文島で撮影された金環日食の写真が掲載され、子ども心ながら礼文島に夢世界を思い浮べたのだ。大人になって、そのことはすっかり忘れていたが、2012年7月21日、近畿で282年ぶりという金環日食を観察したことから、礼文島への憧憬が心の中で再びわきあがり、今年、ようやく実現したしだいだ。そう大きくはないこの島の景観は変化に富んでいて、四季折々、場所によってさまざまな顔をみせる。厳冬期には流氷で閉ざされることもあり、生活をするうえでは不便このうえない島ではあるが、それが結果としてメルヘン世界が今も広がっているように思えた。経済性というモノサシでは評価は低いであろうが、メルヘン度という尺度があるならば、極めて高い評価を得るのではないか。 “編集長が行く《北海道・礼文島 01》Lapiz編集長井上脩身(文・写真共)” の続きを読む

Lapiz2022冬号を掲載します!

Lapiz(ラピス)はスペイン語で鉛筆の意味
地球上には、一本の鉛筆すら手にすることができない子どもが大勢いる。
貧困、紛争や戦乱、迫害などによって学ぶ機会を奪われた子どもたち。
鉛筆を持てば、宝物のように大事にし、字を覚え、絵をかくだろう。
世界中の子どたちに笑顔を。
Lapizにはそんな思いが込められている。
Lapiz編集長 井上脩身

Lapiz2022冬号《巻頭言》Lapiz編集長 井上脩身

絵本『地球をまもるってどんなこと?』の表紙

今年10月、10歳の子どもが環境問題をテーマにした本を出版しました。シンガポール生まれのジョージYハリソン君。本の題は『地球をまもるってどんなこと?』。ハリソン君の文章にイラストレータ—の絵をつけ、絵本として刊行されました。「小学生のわたしたちにできること」という副題がつけられていることからわかる通り、子どもにSDGsのことを知ってもらおうというものです。大人にも手ごろな教科書になりそう、そんな思いをこめて本を開いてみました。 “Lapiz2022冬号《巻頭言》Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

Lapiz2022冬号は12月1日から発行予定です。

Lapiz(ラピス)はスペイン語で鉛筆の意味
地球上には、一本の鉛筆すら手にすることができない子どもが大勢いる。
貧困、紛争や戦乱、迫害などによって学ぶ機会を奪われた子どもたち。
鉛筆を持てば、宝物のように大事にし、字を覚え、絵をかくだろう。
世界中の子どたちに笑顔を。
Lapizにはそんな思いが込められている。
Lapiz編集長 井上脩身

 

 

近刊解説《片山通夫写真集 ONCE UPON A TIME》井上脩身

「片山作品に見る冷戦下のフォトジャーナリズム」 003

祖国への帰還の夢とおく
 米ソ冷戦はヤルタ会談に始まった、と述べた。その合意に基づくヤルタ協定で、樺太南部はソ連に返還されることとされた。この会談の3カ月後、同じアメリカ、イギリス、ソ連の3カ国によってポツダム会議が開かれ、日本はポツダム宣言を受諾して無条件降伏。1951年のサンフランシスコ講和条約で南樺太の全ての権利を放棄することになった。

南樺太は日露戦争後の1905年のポーツマス条約によって日本の領土となり、1931年には、漁業、林業、製紙業を中心に日本人40万6557人が移住していた。 “近刊解説《片山通夫写真集 ONCE UPON A TIME》井上脩身” の続きを読む

近刊解説《片山通夫写真集 ONCE UPON A TIME》井上脩身

「片山作品に見る冷戦下のフォトジャーナリズム」 002

陽気さの奥の翳を捉えるカメラアイ

キューバの近現代の歴史を概観しておこう。
スペインの支配下にあったキューバが1902年に独立した後、製糖産業などにアメリカ資本が多数進出。1952年、バティスタがクーデターで政権を奪取すると、アメリカのキューバ支配がいっそう進んだ。バティスタ独裁政治に反旗を掲げたカストロは、メキシコに亡命中にゲバラに出会って後の1956年にキューバに上陸、2年余りのゲリラ闘争のすえ、1959年1月、バティスタを国外に追放、革命政権を樹立した。 “近刊解説《片山通夫写真集 ONCE UPON A TIME》井上脩身” の続きを読む