徒然の章《紅葉は忘れない》中務敦行

今年の夏は9月まで猛暑が続いた。「今年のもみじはアカンなあ」と思っていた。これまで、暑い夏の秋は葉が枯れたようになって、もみじの撮影はイマイチだった。今年はどうだろう?ところがどうして、きれいに色づきしかも長持ちしたのだ。
11月のなかばから、終わりまで週3~4日を撮影にあてたが、いずこもきれいだった。上越方面から始まり、11月いっぱい。12月になっても撮影可能なところがあると思われる。
「赤目四十八滝」ここの紅葉は山の上の方にある。流れの穏やかな水面に映ったもの。
「霧の朝」は11月の初め、早朝に発生した霧の中での撮影。
「法然院」は京都東山に寺はどこも、人出で賑わい人気の山門には行列ができたとか。
「金剛輪寺」は山内の池に映った紅葉をバックに、落ち葉が浮いてなお参拝者を魅了した。
「北野天満宮」は梅の花で有名だが、もみじ苑が人気だ。写真はコンクリートの通路に散った落ち葉が、踏み固められたもの。
その上に新しい落ち葉が・・・。 “徒然の章《紅葉は忘れない》中務敦行” の続きを読む

心象《丹波の国》片山通夫

丹波の国とは、古くは「たには」とも称し、「旦波」、「但波」、「丹婆」、「谿羽」などの表記も見られる。藤原宮跡出土木簡では例外を除いて全て「丹波」なので、大宝律令の施行とともに「丹波」に統一されたと考えられている。 その中心となるのが京都府亀岡市と福知山市と兵庫県丹波篠山市ではないだろうか。 “心象《丹波の国》片山通夫” の続きを読む

とりとめのない話《一滴の越幾斯》中川眞須良

一滴のエキスが発するかすかな匂いは時として、日常 片隅にしまい込まれているそのものの本質の一部が 自然に外部に解き放たれる瞬間に出会えるときがある。それらは ある時は失望を余儀なくされる悪臭であり、
ある時は発見を予感させるほのかな香りである。

人間の本来持つ五感をさらに感覚界で研ぎ澄ますことを怠らずば、いつの日かこのエキスを嗅ぎ分けることができる「感覚の狩人」を自負するに足るであろう。

ここで この「一滴」を身近な文字 言葉 文章から感じ取ることができた
エキスの香りの例を挙げれば・・・・・

1、川端康成の小説、「雪国」の文頭
国境の長いトンネルを抜けると、雪国であった。 
・ 国境 の読み方である
こっきょう なのか くにざかい なのか。 1958年当時 読者からの手紙による直接の問い合わせ 質問に対し 川端康成本人からの返信は、「どちらでも結構、皆様の自由な気持におまかせします」と確答を避けているし今なお多方面で議論されているが、「くにざかい(越後と上州の)」がこの物語の淡いエキスであろう。

2、島崎藤村の小説、「夜明け前」の序文
木曽路はすべて山の中である。・・・・・・・・一筋の街道はこの深い森林地帯  を貫いていた。
物語全文を読み終えたあとすぐ(時間を置かず、、、)この序文を再読すればさらにこの文章の鋭さ 広さ、深さを味わえるであろう。藤村のエキスそのものである。

3、佐藤惣之助  作詞「もゆる大空」(軍歌)の一部に
文化を進むる意気高らかに・・・・・・・・・

特に戦後 数多くの曲、誌が多くの人により作られたが、それらのなかに「文化」の言葉を見たのはこの時が初めてである。その瞬間作詞家 と言うよリ詩人、歌人、俳人のエキスの香りを感じた人は少数か。
文化 とは・・・・・・・・・・・・・?

4、三橋 鷹女(詩人)
句   鞦韆は漕ぐべし 愛は奪うべし

この作者と句 一滴のエキスなどで論じる次元ではない。ズバリ そのものである。

5、三角 錫子(教育者) 

曲  「七里ヶ浜の哀歌」の作詞者、その文末
    ・・・・・・・・・ 今日もあすも 斯くてとわに 

教育者とともに詩人のエキス

 

6、 今橋 真理子 (俳人)

季節、季語にこだわる句多数

七夕に因んだ句は特に数多く接してきた。秀作か否かの判断よりも先にこの作者に会ってみたいと!想わせた句はこれが初めてだ。

句    文字にせぬ願ひのありて星今宵 

この時のエキスの正体 未だわからず。

7、 茨木 のり子 ((詩人)

眠りを覚ます黄雀風 と称する人あり

詩集  [対話]より

もっと強く (一部抜粋)

 ・・・・・ 男が欲しければ 奪うのもいいのだ・・・・

・・・もっともっと貪婪にならないかぎりなにごとも始まりはしないのだ

前述の 三橋鷹女のエキス との比較は無意味か

書き綴ればきりがないがこのエキス、感覚の世界にのみ浮遊する電波のようなものであろうが 謎だ。 しかし磨きこまれた心のアンテナをより広く張り巡らそうとする日常の行為こそが、この世界へのパスポートだろう。

神宿る。《榎・蘇武橋》片山通夫

この榎(エノキ)は「幹周/5m、樹高/14m、樹齢/推定420年」と案内板に書かれている。奈良県橿原市今井町の入口にデンと構えている。今井町は江戸時代の面影を色濃く残している橿原市の町だ。橿原神宮で有名。《日本最古の正史ともされる『日本書紀』において、日本建国の地と記された橿原。天照大神〈あまてらすおおかみ〉の子孫である神日本磐余彦火火出見天皇〈かむやまといわれひこほほでみのすめらみこと/※後の神武天皇〉が、豊かで平和な国づくりをめざして、九州高千穂の宮から東に向かい、想像を絶する苦難を乗り越え、畝傍山〈うねびやま〉東南の麓に橿原宮を創建されました。》とは神宮のHPに記載されている。その町にある榎、もう神が宿っていてもおかしくはない。

びえんと《朝鮮人虐殺画が表す人の悪魔性》文・Lapiz編集長 井上脩身

~関東大震災がもたらした歴史の闇~

新井勝紘氏著『関東大震災 描かれた朝鮮人虐殺を読み解く』の表紙

関東大震災から100年目にあたる今年、ひとつの本が上梓された。『関東大震災 描かれた朝鮮人虐殺を読み解く』。近・現代史を研究する新井勝紘氏が2021年に発見した『関東大震災絵巻』を中心に、被災した庶民がうわさに踊らされて残忍な行為をした事実を明らかにした一冊である。朝鮮人虐殺について、当時の子どもたちがかいた作文を収めた証言集を私はかつて読んだことがある。新井氏の本に掲載された絵に子どもの証言を重ねると、そこに浮かび上がるのは人間のかなしい悪魔性である。ロシアのプーチン大統領が行っているウクライナ戦争では、ロシア兵による虐殺や強姦が報告されている。仲よくすべき隣国の人々を集団で殺す群集心理の恐ろしさに、私はただただ暗然とする。 “びえんと《朝鮮人虐殺画が表す人の悪魔性》文・Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

連載コラム・日本の島できごと事典 その84《日米共同作戦計画》渡辺幸重

 2021年12月、共同通信のスクープで台湾有事に関する「日米共同作戦計画」の存在が明らかになりました。中国軍と台湾軍の間で戦闘が発生した初期の段階で米海兵隊と自衛隊がどのように対応するか、という内容です。日本政府は「重要影響事態」と認定して自衛隊が米海兵隊を支援し、琉球弧(南西諸島)の島々に小規模に分かれて展開し、臨時の攻撃用軍事拠点を設置するとなっています。 “連載コラム・日本の島できごと事典 その84《日米共同作戦計画》渡辺幸重” の続きを読む