夏の千夜一夜物語《綺麗な景色》構成・片山通夫

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これも聞いた話の受け売りだ。

ある日突然、近所のおじさんが玄関を開けて入ってきた。
酒を飲んでは騒ぎを起こし、そこいらではよく思われていない男だ。
鼻つまみ者の労働者。

「ちょっと外に出てみな。すごい夕焼けだ。見た事もない綺麗な景色だよ。」

何と言うか、顔つきが清々しい。いつになく良い顔をしている。
私はすぐに外へ出て空を見上げた。
確かに綺麗な夕焼けだけど…飛び抜けて感心する程でもない。

「辺りが輝いてるなぁ。生きてて良かった。こんなに綺麗な夕焼けを拝めるなんて、すごいよなぁ。」
そう言いながら、おじさんは坂道を下って行った。

私はぽかーんと空をしばらく見上げて、家に入った。

それからパーンと突き抜けるような電車の警笛の音がした。
救急車や消防車のサイレンが近くで鳴り響く。

おじさんは電車に跳ねられて死亡した。自殺だったそうだ。

生きてて良かった、なんて言った人が自殺なんてするだろうか?
今でも釈然としない。
何かに魅入られたのだろうか?
人は、死ぬ前に美しい景色を見るとは聞いた事があるが…。

夏の千夜一夜物語《立秋》片山通夫

立秋 新暦で今年の立秋は今日・8月7日(土曜日)。しかし今日も真夏、最近は所謂猛暑。いきなり秋と言われても・・・。
少し秋を感じる歌を探しました。

〇秋きぬと眼にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる 藤原敏行
〇川風のすずしくもあるかうちよする波とともにや秋は立つらん 紀貫之
〇さまざまのあはれをこめて梢吹く風に秋知る深山辺の里 西行
〇心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ 西行 “夏の千夜一夜物語《立秋》片山通夫” の続きを読む

夏の千夜一夜物語《声をかける女性》構成・片山通夫

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これは私が体験した、有り得ない体験の話です。

私は色々あって専門学校を中退し、都会から地元へ戻った時がありました。そして特に将来の予定もやる事も無い私は、たまたま街で再会した中学時代の同級生に誘われるまま、コンパニオンのバイトを始めたのです。コンパニオンの仕事は同じ内容でしたが、向かう会場は違う事が多かったです。 “夏の千夜一夜物語《声をかける女性》構成・片山通夫” の続きを読む

夏の千夜一夜物語《大事な祠》構成・片山通夫

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私のおじいちゃんの家の敷地には、お稲荷さんを祀っているという小さな祠がありました。おじいちゃんは祠をとても大切にしていて、中身を見せてくれないだけでなく、自分以外は触ることも許しませんでした。
一度、私が何気なく触ろうとしたら
「何をしてる!絶対にそんなことをしてはいけない!祟られるぞ!」
と凄い剣幕で叱られた事がありました。 “夏の千夜一夜物語《大事な祠》構成・片山通夫” の続きを読む

お詫び:編集室

暑中お見舞い申し上げます。暑い日が続き、台風、土石流などの自然災害やコロナウイルスの猛威と我が国をそして世界を襲っております。菅政権はついに「自助」で「自宅療養」という名目で国民を見捨てるような政策をとるようです。皆様にはご自愛されますように。

お詫びです。
夏の千夜一夜物語《噂の公衆電話》など一連のシリーズですが片山通夫が描いたような構成になっておりますが、インターネットなどから集めた文を掲載している者の名前です。本人が書いたものではありませんのでお詫びと「構成・片山通夫」と訂正をさせていただきます。申し訳ありませんでした。

夏の千夜一夜物語《噂の公衆電話》構成・片山通夫片山通夫

私が中学生の時。馴染みの友人2人と家に集まって、オールの勢いで他愛のない会話をしていました。その際に誰からともなく地元で話題の「出る」という公衆電話の話になったのです。友人宅から歩いて30分かかるかどうかの距離で、住宅街から少し外れた場所にポツンとあり、遠目から見ると何の変哲もない公衆電話。
これに何故か突然「出る」という噂が広まっていました。 “夏の千夜一夜物語《噂の公衆電話》構成・片山通夫片山通夫” の続きを読む

連載コラム・日本の島できごと事典 その32《日本初ネイティブ英語教師》渡辺幸重

トーテム・ポール型のラナルド・マクドナルド上陸記念碑(「ウィキペディア」より)

鎖国時代の1848年(嘉永元年)、一人のアメリカ青年が北海道北西側の日本海に浮かぶ焼尻島の白浜に上陸しました。もちろん密航です。青年の名はラナルド・マクドナルド。ニューヨークから捕鯨船に乗り込み、樺太沖から単独ボートに乗り換えて焼尻島に上陸したのです。彼の母親はネイティブアメリカンで、肌が有色のため差別を受けていたマクドナルドは、母方の親戚から自分たちのルーツは日本人だという話を聞いて日本にあこがれ、日本行きを決意したということです。 “連載コラム・日本の島できごと事典 その32《日本初ネイティブ英語教師》渡辺幸重” の続きを読む

夏の千夜一夜物語《特に1人暮らしの方は自宅を病床のような形で》構成・片山通夫片山通夫

イメージはインターネットから

本当に現在進行中の怖~い話。東京オリンピックが国民の大方の反対を無視してこの23日に開会式を行って開催されている。いきなり菅首相と小池都知事が天皇の開会の宣言時に立たなかったことは、世界に実況中継された。このことにご両人かたともにコメントはない。まさか陛下に「誤解されたのなら謝罪する」とでも、いつもの謝罪ともつかぬ謝罪をするわけにもゆかないだろう。 “夏の千夜一夜物語《特に1人暮らしの方は自宅を病床のような形で》構成・片山通夫片山通夫” の続きを読む

夏の千夜一夜物語《お墓の化け物》構成・片山通夫片山通夫

これは昔のお話。
そのまちには大きなお墓があったそうだ。そしてそのお墓に、夜になると化け物が出るというウワサがあり、だれも近づこうとはしなかった。
「化け物なんているものか!ほんとうに出るのか、オレがたしかめてやろう」
まちでも怖いもの知らずな八兵衛は、みんなが止めるのを聞かずに、夜になるとそのお墓に行ってしまった。

お墓はまっ暗で、ちょうちんの光がてらすところしか見えない。しかしうわさに聞くような化け物は出てこず、八兵衛はまったく怖くなかった。 “夏の千夜一夜物語《お墓の化け物》構成・片山通夫片山通夫” の続きを読む