連載 のん太とコイナ《3 滝のぼり》いのしゅうじ


滝のぼり競争に出場するのは六人。初出場はコイナだけ。ほかの五人は何回か出ていて、「今年こそ」と気力をみなぎらせ、自信満々のようす。
のん太とみどりは、コイナとおばあさんに連れられ、滝がよく見えるところに陣取りました。
「ここは烏弱??の軍ぜいが火縄銃を撃ったところ」
とコイナのおばあさん。のん太は「弱??」という弱そうな名前と、コイキチとが重なり、いやな予感がしました。
察しのいいコイナがクスッとわらいました。
「コイキチは強??よ」
競争が始まりました。
コイキチは少し出遅れたけれど、中ほどでグッとスピードをあげて一気に抜き、水が落ちだす滝口のところに一番のり。その勢いで、ポーンと天に向かって飛びあがりました。
里の山の向こうには、金色にかがやくヤリ山があります。滝から高く飛び上がらないと見えない神秘の山です。
コイキチはヤリの山の黄金の光を、目にきざみこみました。

滝の横の広場で表彰式が行われました。
表彰台には里長(さとおさ)が立っています。もう何百年も生きている里長。電気もガスもないこの里でこいのぼりが暮らしていけるのは、経験豊かな里長がいるからなのです。
コイキチが表彰台にあがりました。
里長が声をかけます。
「こいのぼりの里の勇者とみとめる」
会場には里のすべてのこいのぼりが集まっています。コイキチをたたえて、どよめきが起きました。
「ウオー」
どよめきがしずまると、滝のぼり踊りが始まりました。
コイキチにかわって、おばあさんが表彰台に上がりました。
滝のぼり競走の一番が里長とともにおどるのが決まりですが、コイキチが「おばあさんに」と強く言いはったのです。
それぞれが体を低くし、地面すれすれのところでおなかのひれをふるわせます。すこしずつ体をもちあげ、胸をはってひれで天をつく。これをくり返しながら、輪になっておどるのです。
のん太とみどりも遅くまでおどりつづけました。(明日に続く)