連載 のん太とコイナ《3 滝のぼり》いのしゅうじ


こいのぼりフェスタの日がやってきました。
今年はいつもと違います。毎年のアカダ川でのフェスタのほかに、「おばけい」でも行うことになったのです。
おばけいはアカダ川の上流の渓谷。ほんとうの名前は「小母谷」。
長さ二キロくらいのおばけいの中ほどに、二段の滝があります。
「滝のぼりフェスタをしては」との市民の意見にこたえて、
「滝つぼの手前と下の段の滝に、こいのぼりを水につかるようにつるす。そして上の段の滝には、コイナとコイキチにのぼってもらう。
というもよおしを実施することになったのです。
滝のぼりフェスタには大勢の人がやってきました。
滝つぼのそばに小さな広場があります。
市長さんにつづいて、のん太がマイクを手にしました。
滝の上部に達したコイナを指さし、
「あの子は天までとび、天の川を泳ぎたいのです。でも、天の川は見えません。天の川が見えるようにしてください」


コイナは里で静かにすごしています。でも、何かもの足りません。
あるとき、コイキチが「コイの町に行ってみたいな」とひとり言のように言いました。コイナはハッとしました。コイの町にはたくさんの花が咲いていたのでした。
「この里をコイの町のようにするわ」
コイナはいろいろな野の花のタネを小川のそばにまきました。やがて赤、紫、黄色など色とりどりの花が咲きました。
さわやかな香りがひろがり、小鳥が気持ちよさそうにさえずります。せせらぎも、やわらかな音色をひびきかせています。
たまたま中が空洞になった倒木をたたくと、ゴーンとなりました。幹の太さが異なると、音の高さや質がちがいます。
太い幹は低くドーン。
細い幹は高くトーン。
音にあわせて高く低くさえずる小鳥。ピョンとはねて、せせらぎの音にアクセントをつける小魚。
「色、香り、音。自然は美しいハーモニーを生むんだわ」
コイナの言葉も美しい、とのん太は思いました。
(おわり)