連載コラム・日本の島できごと事典 その116《鬼界カルデラ》渡辺幸重

7300年前の鬼界カルデラ噴火による火砕流と火山灰の到達域

直径1.5km以上の大型の火山性円形くぼ地をカルデラと言います。日本では阿蘇山が有名ですが、鹿児島県の薩南諸島には海底に東西約20km、南北約17kmの楕円形状をした陥没型の「鬼界カルデラ」があります。カルデラを作るような超巨大噴火が日本では過去15万年のあいだに14回起きたと言われますが、鬼界カルデラは日本で最も新しい巨大カルデラで、かつ過去1万年以内では世界最大規模のものです。鬼界カルデラでは、13万年前と9万5000年前にも超巨大噴火が起きたことが分かっており、7,300年前に起きた超巨大噴火で現在の鬼界カルデラができました。このとき、火砕流は海を越えて薩摩半島や大隅半島にまで達し、その地域の生物を飲み込み、当時の縄文文化を壊滅させました。また、噴煙は偏西風に運ばれて東北地方にまで達し、日本中に火山灰が降り積もりました。これらの地域や屋久島などではこのときの火砕流(幸屋火砕流)が見られます。

九州島と屋久島の間の海域には硫黄島(薩摩硫黄島)、竹島、黒島が浮かんでいます。これらを上三島(かみさんとう)または口三島と呼び、鹿児島県鹿児島郡三島(みしま)村を形成していますが、硫黄島と竹島は鬼界カルデラの北縁部にあたる外輪山で、硫黄島では今でも主峰の硫黄岳から噴煙が上がっています。鬼界カルデラの地下には流紋岩質マグマと玄武岩質・安山岩質マグマの二層構造マグマだまりがあり、次の大噴火に向けてマグマが少しずつ増え続けている可能性が指摘されています。神戸大学とJAMSTEC(海洋開発研究機構)はさまざまな方法を駆使した総合調査によって海底下100km程度までの地下構造を描き出し、フィリピン海プレート付近でマグマがつくられ上昇するまでの全体像を明らかにしようとしています。

硫黄島は火山噴火予知連絡会によって火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山に選定されており、24時間体制で常時監視・観測されています。また、三島村の全陸域と海底カルデラは2015(平成27)年9月に「三島村・鬼界カルデラジオパーク」として日本ジオパークに認定されています。

図:7300年前の鬼界カルデラ噴火による火砕流と火山灰の到達域
※「海と地球の情報サイトJAMSTEC BASE」より
https://www.jamstec.go.jp/j/pr/topics/20220428/