冬の夜の昔話《コロポックルという神様》片山通夫

コロポックルとはアイヌ民族の間で伝えられてきた神様である。神様そのものはカムイと表現するらしい。コロポックルは何となくその音がかわいい。かわいいのは音だけではなさそうだ。北海道には人の背丈を超える蕗が生えるとか・・。その蕗の下にコロポックルは住む。しかし、その姿を見た人はいない。どうして蕗の下に住んでいる皓が分かったのかは謎だ。

アイヌの人々の間でこんな伝説がある。
アイヌがこの土地に住み始める前から、この土地にはコロボックルという種族が住んでいた。彼らは背丈が低く、動きがすばやく、漁に巧みであった。又屋根をフキの葉で葺いた竪穴にすんでいた。

彼らはアイヌに友好的で、鹿や魚などの獲物をアイヌの人々に贈ったりアイヌの人々と物品の交換をしたりしていたが、姿を見せることを極端に嫌っており、それらのやりとりは夜に窓などからこっそり差し入れるという形態であった。

そんなある日、あるアイヌの若者がコロボックルの姿を見ようと贈り物を差し入れる時を待ち伏せ、その手をつかんで屋内に引き入れてみたところ、美しい婦人のなりをしておりその手の甲には刺青があったという(なおアイヌの夫人のする刺青はこれにならったものであるといわれている)。

コロボックルは青年の無礼に激怒し、一族を挙げて北の海の彼方へと去ってしまった。以降、アイヌの人々はコロボックルの姿を見ることはなくなったという。現在でも土地のあちこちに残る竪穴や地面を掘ると出てくる石器や土器は、彼らがかつてこの土地にいた名残である。