連載童話《のん太とコイナ[天の川]#10》文・画 いのしゅうじ

嵐は、夜明け前にはすっかりおさまりました。
かわって空一面に星がきらめいています。
「見てごらん、天の川だよ」
のん太がおばあさんの指さす方に目を向けると、白っぽい帯がくねりながら、天空をつらぬいています。
たなばたの日、織姫と彦星が天の川をはさんで会う、とのん太は聞いたことがあります。
「ぼく、ほんものを見るのはじめて」
「人間はバカだよ。電気であかあかと夜を照らして、天の川を見えなくしたんだから」
日がのぼると天の川は見えなくなります。
おばあさんは、
「のん太くんをつれて帰るのは今のうちだよ」
とコイナをうながしました。
コイナはのん太をおなかに乗せて、天の川をわたるようにすすんでいきます。
「わかった。コイナちゃんは川は川でも天の川を泳ぐんだ」
コイナはこっくりとうなずきました。(おしまい)