とりとめのない話《群青の小宇宙》中川眞須良

クリスティーナ・ローガン氏の作品

群青色。この言葉に我々日本人はどのようなイメージを持つだろう。

言葉の意味としては「濃い紫味の青」 とするのが一般的のようだが人それぞれ抱くイメージは多彩だ。海や空の青、顔料や岩絵の具の青、内面的には 古来からの日本人の心の色、更には至上の存在感の表現手段の色など広い。

今、日本人の「魂の原色」「心の深遠」とも言えるこの群青の世界を己の芸術で表現することにこだわる一人のアメリカ人女性とんぼ玉作家の存在がある。その彼女の名、クリスティーナ・ローガン。米寿を過ぎて久しい、ご存命なのだろうか。とんぼ玉作家としての知名度は高いが群青の表現にこだわる作品が多い事はあまり知られていない。この世界に詳しい人のいわゆる「ローガン評」によれば「彼女自身の好きな色と 愛する日本人の心の色とが合致したからだ・・・」とか。さらに「彼女は作品を通じて群青の世界の表現にこだわり続けるであろう・・・。」とも。

ここで彼女の作品の一つを取り上げてみると直径2cmの球体である。(制作過程上 直径3mmの空洞が中心を貫通している。地球にイメージを移すと南北両極間の空洞の地軸)

全体的には「やや薄めの紫の地に黒い線による大小の正方形(四隅に黄色のつなぎ目を配置)を整列させた網の目状の少し複雑なデザインになっているが透明感、鮮やかな色彩感、独創的なデザイン感はあまりなく他の作家の作品と比べやや複雑なデザインではあるが反面地味な印象を与える。

入手して数日後 自室卓上に置かれたこの一つのとんぼ玉、ガラス越しに午後の日差しのもとで普段とは違った雰囲気を醸し出しいていることーに気がついた。 その時の室内への太陽光線の角度と波ガラス越しの屈折状態とさらに乱反射の偶然か ワックスがけをしたような透明度、そして立体感が増し さらにとんぼ玉への入射光の一部が漏れ出したかのように群青色の光が平面上にわずかだがはっきりと映し出されていた。咄嗟に同じ条件での再現になるのではと思い、すぐ手に取り中心の穴の部分(極)に目を近づけ光の方向(一方の極)を覗いてみると逆光に反射する群青の輝きがすぐ確認でき、さらに目にピタリと近づけると色の濃淡、影の大小、手の僅かな動きに反応して浮遊する細かい粒子の波、と群青一色の世界が広がっている状態に出会うことができた。

蛍光灯、白熱球、和蝋燭の光、スポットライトと光源を変えれば、その見せる世界はまた微妙に、無限に変化する。

クリスティーナ・ローガンがこのような世界の表現に拘る作家だと知ったのは、私がこの世界を逆光の中に見つけることができた少し後のことでる。彼女のとんぼ玉ファンはこの世界をどのように楽しんでいるのだろうか。また彼女は今後もこの小宇宙をどのように旅をしどのようなメッセージを発信し続けるのだろうか。

「群青はなぜ深いか」を想いながら?。

直径2cmの玉を光に向ける毎に思う。とるに足らぬ疑問であるが・・・。