原発を考える。《安全な水なら海に捨てるな。》一之瀬明

いわき市の海

報道によると中国が日本産の水産物の放射線量チェックの方法を抜き取りから全量チェックに変更した。検疫で時間がかかり税関で通関出来るころには、新鮮な魚も下手をすれば腐ってしまう。この厳格な措置は福島第一原発の汚染水を、海へ流す計画への対抗措置と見られる。日本の鮮魚の第一の輸出先の中国のこの措置に、日本の弱小業者は倒産の危険が。また香港も同様の禁輸に踏み切った。

福島第一原発は2011年の東日本大震災で、津波による深刻な被害を受けた。以来、汚染水が100万トン以上たまっているという。政府と東電はいま、それを太平洋に放出しようとしている。原発が水を海洋放出するのは一般的なことと言えるが、今回放出しようとしているのが原発事故に絡む副産物であることを考えれば、通常の放射性廃棄物とはいえない。

また福島や近隣の漁業者はいわゆる風評被害を心配する。「汚染水」を「処理水」と言い換えるだけの姑息さに呆れるとともに先の大戦で敗戦を終戦と言い換える姑息さを見るように感じる。有力な政治家の麻生太郎氏は21年4月に「飲めるんじゃないですか、普通」と言ってのけた。もう2年あまりたっているが、「飲んだ」という話は聞かない。

これまでに1000基以上のタンクが満杯になっている。日本はこのタンクに保存措置について、持続可能な長期的解決策ではないと説明。今後30年間かけて、この水を徐々に太平洋に放出したい考えで、水は安全だと主張している。中国は「安全な水なら海に捨てる必要はない」と。

岸田首相は「この先何年でも責任を負う」と言うが、数年前の漁業者との約束も守れない政府がどんな約束をされても信じられないのではないか。

 

神宿る。《三島神社(大阪・門真市)の薫蓋樟(くんがいしょう)》:片山通夫

三島神社

 

大阪一の巨樹で、国の天然記念物に指定されている楠。薫蓋樟は「大阪みどりの100選」にも選ばれており、100選を選ぶ時の投票でも一番投票数が多かった。

樹齢 1000年越え  高さ 30メートル程度
幹回り 13m程度

大阪きってのパワースポットとして有名。

 

Lapiz2023秋号《巻頭言》Lapiz編集長 井上脩身

主要7カ国首脳会議(G7)が5月19日から21日まで広島で行われました。首脳は原爆資料館を見学した後、そろって原爆死没者慰霊碑に献花しました。慰霊碑の向こう建つ原爆ドームを目にして、何を考えたのでしょう。私は実況されているテレビ映像を見て、俳優、吉永小百合さんが朗読した原爆詩「慟哭」を思い浮かべました。子どもを失った母親の悲しみを切々とつづったこの詩のことを首脳たちは知らないにしても、原爆がいかに残忍なものであるかを学んだはずです。ならば核廃絶を目指すのが世界のリーダーであるG7首脳の役割と自覚すべきでしょう。しかし、「核廃絶」という言葉はついに発せられませんでした。 “Lapiz2023秋号《巻頭言》Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

Lapiz2023秋号のお知らせ

Lapiz2023秋号Vol.47は9月1日から掲載を開始します。
井上編集長の巻頭言から始まります。お楽しみに!!

 

Lapiz(ラピス)はスペイン語で鉛筆の意味
地球上には、一本の鉛筆すら手にすることができない子どもが大勢いる。
貧困、紛争や戦乱、迫害などによって学ぶ機会を奪われた子どもたち。
鉛筆を持てば、宝物のように大事にし、字を覚え、絵をかくだろう。
世界中の子どたちに笑顔を。
Lapizにはそんな思いが込められている。
井上脩身編集長

 

Lapiz2023夏号

Lapiz2023夏号はこれで掲載を終わります。ご購読ありがとうございました。
次号は2023年9月1日から秋号を掲載予定です。
なおカテゴリー2023夏号Vol.46で全記事を読むことができます。

連載コラム・日本の島できごと事典 その105《風の子学園事件》渡辺幸重

コンテナ解体を前に手を合わせる作業員(毎日新聞より)

広島県三原港の南東約4kmに浮かぶ小佐木島(こさぎしま)は周囲4kmほどの小さな島です。昭和30年代には人口140人を数えたものの最近はわずか5人(2020年国勢調査)と過疎化が進んでいます。1991(平成3)年7月末、この島にあった民間の情緒障害児更生施設「風の子学園」で14歳の少年と16歳の少女がコンテナに監禁されて“熱射病(現在は熱中症)”で死亡するという事件が起きました。事件から32年経った今年(2023年)6月、地権者と連絡が付かなかったためにとり残されていたコンテナが住民の要望によりやっと撤去されました。この報道に接した人は、いまでもときどき報じられる子供に対する虐待や放置の問題を考えさせられたのではないでしょうか。

風の子学園は、島外の人が学園長となって1989(昭和64)年に小佐木島に開設されました。不登校や問題行動をする児童・生徒の更生を目的とする宿泊型施設で、親元を離れ、自然に囲まれた環境のなかで座禅をしたり、馬などの動物を飼育する体験活動を行っていたということです。事件は、喫煙した少年少女が懲罰として手錠をかけられ、鉄製の貨物コンテナ内に監禁されて起きました。コンテナは窓もなく、内部は炎天下に40度以上の高温に達していたのです。少年少女はその中に44時間監禁され、脱水状態に陥って亡くなりました。事件後、学園は閉鎖されましたが、学園長の男性(当時67歳)は監禁致死罪で起訴され、懲役5年の有罪判決が下されました。
学園長は以前にも東能美島(旧・広島県佐伯郡大柿町)でカッター訓練などによって青少年を更生させる施設を経営したことがあり、そこでも暴力行為が行われていたと言われます。
被害者の少年は姫路市の中学3年生で、非行グループに属していたことから学校の生徒指導教諭や市教育委員会の指導主事が両親を説得して入園させたそうです。学園は少年に対して指導・教育を行うことはなく、脱走を図ったり、喫煙したりするので懲罰と脱走防止のために繰り返しコンテナや飼料小屋に監禁していました。少年の遺族は学園長と姫路市を相手に損害賠償を求める民事訴訟を起こしました。その結果、施設の実態を調べずに紹介した姫路市教育委員会にも法的責任があるとして姫路市にも損害賠償を命じる判決が確定しました。

風の子学園事件の前後には、戸塚ヨットスクール事件(1982年、愛知県)、不動塾事件(1987年、埼玉県)、恩寵園事件(1995年、千葉県)、丹波ナチュラルスクール暴力・虐待事件(2008年、京都府)、北九州児童養護施設虐待事件(2018年前後、福岡県)などの児童・青少年に対する虐待・暴行事件が起きています。

連載童話《のん太とコイナ[天の川]#1~#10》文・画 いのしゅうじ

1)ここはアカダ川のていぼう。男の子が寝そべっています。
男の子はのん太、小学四年生。ほんとうの名前は則夫。
のん太は学校でいやなことがあると、通学路のアカダ川の橋からていぼうに下り、あおむけになってぼおっと空をながめます。そうしてると、学校でのことを忘れられるのです。
のん太を見て、だれかが「のんびりのん太」とからかいました。それからは、友だちだけでなく、お父さんまで「のん太」とあだ名で呼ぶようになりました。
その父さんのお気に入りはアカダ高校のタイコえんそう。「高校生ばなれのうで」といいます。
こどもの日、アカダ川では毎年「こいのぼりフェスタ」が開かれます。
フェスタの一番の呼びものはアカダ高校のタイコえんそう。
なので、お父さん、お母さん、妹の一家四人で、河原でお弁当を広げるのが、のん太の家のこども日のならわしです。
今年も、家族でフェスタに行きました。千びきのこいのぼりが、気もちよさそうに泳いでいます。 “連載童話《のん太とコイナ[天の川]#1~#10》文・画 いのしゅうじ” の続きを読む

連載童話《のん太とコイナ[天の川]#10》文・画 いのしゅうじ

嵐は、夜明け前にはすっかりおさまりました。
かわって空一面に星がきらめいています。
「見てごらん、天の川だよ」
のん太がおばあさんの指さす方に目を向けると、白っぽい帯がくねりながら、天空をつらぬいています。
たなばたの日、織姫と彦星が天の川をはさんで会う、とのん太は聞いたことがあります。
「ぼく、ほんものを見るのはじめて」
「人間はバカだよ。電気であかあかと夜を照らして、天の川を見えなくしたんだから」
日がのぼると天の川は見えなくなります。
おばあさんは、
「のん太くんをつれて帰るのは今のうちだよ」
とコイナをうながしました。
コイナはのん太をおなかに乗せて、天の川をわたるようにすすんでいきます。
「わかった。コイナちゃんは川は川でも天の川を泳ぐんだ」
コイナはこっくりとうなずきました。(おしまい)

連載童話《のん太とコイナ[天の川]♯9》文・画 いのしゅうじ

 のん太が焼きイワナをかじっていると、おばあさんが、
「吹き流しがさわぎだした」

とつぶやきました。
小屋の裏に吹き流しがかけられています。のん太が外に出てみると、そのしっぽがゆらゆらしています。
「あんなのにのって見たいなあ」
とぽつんと言ったので、コイナがのせてくれました。
しばらくすると、吹き流しがはげしくゆれだしました。
コイナは小屋の屋根にあがって、板屋根がふきとばされないよう、カナヅチでたたいています。
おばあさんは尾ヒレを足のようにして歩いています。外にあったジャガイモを小屋の中にしまいこむため、まっすぐ立って、口の上にひともりのジャガイモをのせていました。
こいのぼりが歩くなんてビックリです。でものん太はふるえ上がって何も見ていません。
激しく雨がふってきたからです。嵐がやってくるきざしでした。

連載童話《のん太とコイナ[天の川]#8》文・画 いのしゅうじ

雪をかぶった山々をこえると、コイナは、
「あそこよ」
と言って、ぐんぐん高度を下げました。
丸太で組んだ小屋の前で、だれかが手をふっています。
「おばあちゃんよ」
コイナが着陸。おばあさんは「よく来たね」と、のん太を小屋の中に招き入れてくれました。
電気はないらしく、窓からの光だけが明かりのようです。
部屋のまん中にいろりがあり、炭火が小さな炎をあげています。そのまわりにイワナがくし刺しされています。
「食べごろだよ」
おばあさんがおなかのヒレで焼き上がったイワナをきようにつかみ、のん太に「さあ、お食べ」とさしだしました。
おどろいたようにおなかのヒレを見つめるのん太。おばさんはわらいました。
「人間の手のように動かせるの。わたしたちは何千年もかけてくんれんしてきたんだよ」