2018春号《宿場・東海道 小田原宿》Lapiz編集長 井上脩身

小田原提灯ぶら下がる街

~お猿のかごやに思いはせ~
 昨年秋、箱根の足柄山に登るため、JR小田原駅に降りた。ホームを歩いていると、童謡『お猿のかごや』のメロディーが聞こえる。♪エッサ エッサ エッサホイサッサ――。子どものころ何度か聞き、うたった。懐かしくなって口ずさむ。「小田原提灯ぶらさげて」。小田原提灯で何だろう、お猿のかごやはだれを乗せてどこへ行こうとしているのだろうと、子ども心に不思議に思ったものだ。あれから60数年がたつ。今になって解明したいと思った。小田原は東海道の宿場だった。宿場と何か関係があるのだろうか。1月下旬、かつてに小田原宿を訪ねた。 “2018春号《宿場・東海道 小田原宿》Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

2018春号《びえんと 新米記者の赤軍派事件》Lapiz編集長 井上脩身

新米記者の赤軍派事件
――よど号事件に思う――
私は大阪の大手デパートの文化教室で、文章講座の講師をしている。今年1月の講座で、Oさんが「針の莚」と題するエッセーを書いた。ある赤軍派事件の実行犯の母親の辛さ、悲しさに思いを寄せてつづった一文だ。赤軍派によるよど号事件が起きたとき、わたしは新聞社で新人研修を受けている最中だった。講義では刻々と動く事件の様相がそのまま教材になり、新聞社の仕事がいかに時間との闘いであるかを、否が応でも実感した。講義が終わると飲み会になった。話題は当然よど号事件。「北朝鮮が本当に幸せな国なのだろうか」と、その場にいたベテラン記者に問いかけたことを覚えている。平昌オリンピックに北朝鮮が参加し、女子アイスホッケーでは合同チームが組まれた。韓国、北朝鮮双方の政治的思惑が一致した一時的融和との見方が強く、民族統一への道のりは遠い。ハイジャック犯たちが北朝鮮に行く意味は何だったのか。あと2年でよど号事件から半世紀になる。 “2018春号《びえんと 新米記者の赤軍派事件》Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

2018春号《西南戦争と大津事件》編集長 井上脩身

西南戦争と大津事件
―七難七福の人間ドラマ―
1月下旬、10年ぶりに三井寺を訪ねた。1100年余の歴史をもち、国宝の金堂をはじめ10件の国宝と42件の重要文化財がある西日本有数の大寺院。琵琶湖が望める立地に加えて、春は桜、秋は紅葉が境内に満ち、多くの参拝客でにぎわう観光の寺でもある。今回、時期外れに訪問したのは、NHKの大河ドラマ『西郷どん』を見ていて、三井寺の裏山にある「西南戦争記念碑」を思い出したからだ。この碑が大津事件のきっかけになったと私は考えている。大津事件は司法の独立が守られた事件として歴史教科書にも載っているが、この事件の登場人物はことごとく数奇な運命をたどり、悲しい結末を迎える。大津事件を人間ドラマとして見直してみると、「富国強兵」の掛け声の陰にひそむ明治の日本の哀れな一面が浮かびあがるのだ。 “2018春号《西南戦争と大津事件》編集長 井上脩身” の続きを読む

2018春号《原発を考える》井上脩身

原発国日本に迫る火山の恐怖
―襲いかかる火砕流と火山灰―
広島高裁は昨年12月13日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)について、「阿蘇山の火砕流が敷地に到達する可能性が十分小さいとはいえない」として、運転差し止めを命じる決定を下した。阿蘇山から同原発は130キロ離れているが、野々上友之裁判長は「過去最大の噴火を想定すべきだ」と指摘し、「原発立地として不適」と判示した。我が国のいずれかの火山が大規模噴火を起こした場合、火砕流にとどまらず、火山灰が数百キロ先に降り注いで原発の運転に影響する恐れがあると指摘されている。自然の猛威は人知をはるかに超えるものであることは、東日本大震災による大津波で証明された。我が国は地震国でありかつ火山国である。全ての原発を廃止する以外に噴火の恐怖から逃れるすべがないことは歴然としている 。 “2018春号《原発を考える》井上脩身” の続きを読む

3月に入りました。

Lapizのサイトでは今月から巻頭言をはじめ春号に掲載している記事を順に紹介してゆきます。お楽しみに。

また「ジョセフ・ヒコの幕末維新」は連載5回を別冊として掲載してゆきます。

2018春号《巻頭言》Lapiz編集長 井上脩身

今年1月23日、草津白根山(群馬、長野県境)のなかの本白根山が噴火、近くのスキー場で訓練中の陸上自衛隊員1人が死亡しました。本白根山の噴火は3000年ぶりだそうです。気象庁をはじめ火山専門家は「火山活動の高まりを示す現象がない」として、全くマークをしておらず、寝耳に水の出来ごとでした。我が国が世界有数の火山国であることはだれでも知っていることですが、どこででも噴火は起きる、という自然の怖さを改めて認識させられました。私はテレビで放映される噴煙の動画を見ながら、57年前に登った北アルプスの焼岳(標高2455メートル)を思い出していました。高校2年生の夏、初めての本格的な登山として焼岳に登り、頂上近くの山小屋に泊まりました。その山小屋が翌年の噴火による火山灰で押しつぶされ、4人がけがをしたのです。そのニュースに背筋が凍る思いをしたことを今も鮮明に覚えています。 “2018春号《巻頭言》Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む