秋の夜長に聞く話《灘の生一本》片山通夫

灘五郷絵図

関西には酒どころと言われている郷がいくつもある。代表的なのが「灘五郷」。神戸市灘に有名な造り酒屋がひしめいている。五郷とは、兵庫県の灘一帯にある5つの酒造地の総称である。西郷、御影郷、魚崎郷、西宮郷、今津郷を指す。日本の清酒生産量の約3割を占める。筆者の知り合いのも過去に造り酒屋を営んでいたり酒樽の製造に携わっていた家があった。魚崎と今津のそれらは存在した。 「灘の生一本」という言葉がある。少し長いが引用したい。

灘の生一本」は、清酒のうちでも最も優秀な清酒を表す語として、古くから用いられてきた。灘酒の男性的な風味は、生一本という語感とぴったり一致し、灘酒の愛好家である江戸の人々の気性にも良く合い、いつとはなく人々の評判になり世に知れ渡ったものと思われる。
その語意については諸説あるが、元々は「灘で生まれ育った生粋の混じりけのない酒(原酒)」という表現が当を得ているようである。1940年に清酒の成分規格が設定され、市販酒は原酒を加水して規格調整を行ったうえで出荷されるようになり、現在では、灘五郷の単一の製造場のみで醸造した純米酒を「灘の生一本」と呼ぶようになった。

筆者が聞いたところではこの最後の「灘五郷の単一の製造場のみで醸造した純米酒」を指すという。いずれにしても由緒正しい酒なのだ。