Lapiz2022冬号《巻頭言》Lapiz編集長 井上脩身

絵本『地球をまもるってどんなこと?』の表紙

今年10月、10歳の子どもが環境問題をテーマにした本を出版しました。シンガポール生まれのジョージYハリソン君。本の題は『地球をまもるってどんなこと?』。ハリソン君の文章にイラストレータ—の絵をつけ、絵本として刊行されました。「小学生のわたしたちにできること」という副題がつけられていることからわかる通り、子どもにSDGsのことを知ってもらおうというものです。大人にも手ごろな教科書になりそう、そんな思いをこめて本を開いてみました。 “Lapiz2022冬号《巻頭言》Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

びえんと《マラリアの山に追いやられた八重山の人たち》文・Lapiz編集長 井上脩身

~日本軍の戦争犯罪を絵で告発~
 戦時中、「避難」と称して、日本軍が住民をマラリアが流行する山中に追いやっていたことを、最近『絵が語る八重山の戦争』(写真右)という本で知った。住民の半数以上がマラリアにかかり、4分の1が死亡した。戦後、将校の宿舎からマラリアの特効薬、キニーネがつまった袋が発見された。軍は住民にマラリアの恐怖を強いながら、自らは罹患の恐れのないところにいて、かつ我が身を守る手立てをしていたのである。沖縄戦ではガマに逃げた住民を軍が追い出した例はあまたあるが、八重山では住民をハマダラ蚊の襲撃のなかにさらしていたのだ。 “びえんと《マラリアの山に追いやられた八重山の人たち》文・Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

Lapiz22秋号《巻頭言》Lapiz編集長 井上脩身

東京地方裁判所

13兆円。その天文学的な金額に驚きました。東京電力福島第1原発の事故をめぐって、東電の株主48人が「事故が起きたのは旧経営陣が津波対策を先送りしたため」として、元役員5人を相手取って賠償を支払うよう求めた訴訟で、東京地裁の朝倉佳秀裁判長は7月13日、うち4人に賠償を命じる判決を言い渡しました。その賠償額は13兆3210億円。民事裁判では過去最高だそうです。1兆円は1万円札を積み上げると10キロになるそうです。ならば13兆円は130キロ。富士山の34・4倍の高さに相当します。元役員の怠慢は「富士山34・4個の重さ」なのです。 “Lapiz22秋号《巻頭言》Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

22年夏号Vol.42 びえんと《語り部になったアウシュビッツ生還者》井上脩身

第二次世界大戦中、ナチス・ドイツの強制収容所に送りこまれながら生き延びたウクライナ人の男性(96)が、ロシアの攻撃で死亡したことが3月21日に発表された。たまたま私は『アウシュビッツ生還者からあなたへ――14歳、私は生きる道を選んだ』を読み終えたところだった。強制収容所から生き延びたイタリアの終身上院議員、リリアナ・セグレさんが語った体験を、中村秀明・元毎日新聞副論説委員長が翻訳し岩波ブックレストとして刊行されたのだ。戦後77年。ロシアのプーチン大統領が行うウクライナ戦争の惨状をみると、強制収容所が決して昔話ではない恐ろしさを禁じ得ない。 “22年夏号Vol.42 びえんと《語り部になったアウシュビッツ生還者》井上脩身” の続きを読む

22年夏号Vol.42 《巻頭言》Lapiz 編集長 井上脩身

姉のナターシャ・グジーさん

ウクライナにバンドゥーラという民族楽器があります。コントラバスとハープをくっつけたような、涼やかな音色の弦楽器です。日本人にはなじみのないこのバンドゥーラ奏者のウクライナ人姉妹が日本にいます。姉妹は祖国の平和を願って日本の各地でコンサートを開いています。

 姉妹はナターシャ・グジーさんとカテリーナ・グジーさん。姉妹はチェルノブイリ原発近くのプリチャピという町で生まれました。1986年4月26日、同原発が事故を起こしたとき、姉のナターシャさんはプリチャピの小学生、妹のカテリーナさんはまだ生後1カ月の乳児でした。一家は「3日間だけ」といわれて首都キーウに避難。同原発周辺に立ち入ることはできず、一家がプリチャピに帰るというささやかな夢はついえました。

姉のナターシャさんはキーウの小学校に転校、やがてバンドゥーラに出合い、8歳のときから音楽学校で本格的にバンドゥーラ演奏と声楽を学びます。そして同事故で被災した少年少女を中心に結成された音楽団「チェルボナ・カリーナ(チェルノブイリの赤いカリーナ)」のメンバーとして1996年と1998年に来日しました。日本に魅力をおぼえ2000年から日本で活動をはじめました。

妹のカテリーナ・グジーさん

妹のカテリーナさんもキーウの小学校に上がると、お姉さんの後を追うようにチェルボナ・カリーナに入団しました。バンドゥーラを演奏しはじめ、10歳のとき楽団の一員として来日。ウクライナの文化を日本に伝えたいと思うようになり2006年、日本に移住しました。

2011年3月11日、福島第一原発で事故が発生。「安全な国」と感じていた日本でチェルノブイリ原発事故クラスの過酷事故が起きたことに姉妹は驚愕。ナターシャさんは2017年7、事故原発があった福島県大熊町の小学校が避難している会津若松市の仮校舎で演奏。カテリーナさんは福島事故から10年がたった2021年、滋賀県彦根市でのコンサートに出演するなど、バンドゥーラ演奏を通して、被害に遭った人たちを支援したり、原発事故の恐ろしさを訴えてきました。・ “22年夏号Vol.42 《巻頭言》Lapiz 編集長 井上脩身” の続きを読む