コラム・とりとめのない話《普通》中川眞須良

「普通」

一匹の蟻の歩行を観察していると握りこぶし大の石の壁に行く手を遮られると、その行き先(進路)は三択である。それは 左折、右折、又はUターン。なかには極稀に一瞬立ち止まってからゆっくりとその石をよじ登り、直進に拘る蟻もいる。となれば四択ということになるのか。
この「一匹の蟻」を「一人の人間」に対象を置き換えてみればどうだろう。

一人の人間の生き様の途中に突然、行く手を遮る難題に直面した場合である。

左折、右折、Uターンは一般的な対処(対策)だ。ならば石をよじ登り直進にこだわるタイプはどう受け止められるだろうか。こだわり屋、ユニーク、一言で言えば「ちょっと変人」のレッテルを貼られるであろう。しかし人間の生き方は限りなく多様だ。 さらに先の蟻の一匹のなかに、石の前に立ち止まリしばし考えた末、地中に潜り地下に進路をつくり活路を見出し二度と地上に現れることがないようなものがいれば人間の場合なら 超変人かもしれない。

となれば人間の生き方、考え方はこれら三つのタイプに分けられる という一つの結論が成り立つ。

1、一般的対処人 いわゆる「普通人」
1、こだわり屋 いわゆる「ちょっと変人」
1、滅多にいない人 「超変人」
である。(以下 順にa人,b人,c人と称す)

まず人間はすべてこれら3タイプのなかにある とする判断基準は「普通」と言う言葉の日常的概念から判断されたのであろう。

この 「普通」と言う言葉 我々の日常幾度となく耳にし口に出しているのにその意識、記憶がほとんどないのが不思議である。 しかし辞書にはその説明に多くの項目が並んでいる。
一般的、日常的、標準的、平均的、多数派的など聞き慣れた言葉が整然と。

「・・・的」の「的」とは「・・・の状態をなす」の意、即ち一般的とは「一般の状態をなす」と言うことになるが感覚的にはよくわからない。さらにこれらの各項目の続きに「普通」と言う言葉を使った日常語が30程度挙げられ説明されている。

ーー自動車、ーー預金、ーー列車などがその代表である。

たとえば普通自動車と大型自動車、普通預金と定期預金、普通列車と急行列車 それらの違いは明確であリ、各分野でそれぞれ定義づけられているのでその違いに疑問を持つ人はまずいないだろう。そして辞書にはこれらの項目の次に「普通人」が挙げられている。その説明は至ってシンプル 「並みの人、世間一般の人」それだけである。いわゆる定義が ないのであろうか、できないのであろうか、それともこれが定義なのだろうか。そこには漠然とした感覚が存在するだけである。

今仮に、何か一つの事案の判断内容の結果に対しその多数派の人をa人とするならば それ以外の人はb,c人となるのであろうか、決してそうではなかろう。それはその時々に於いて偶然それに対し同じ感覚を持ち合わせた人々の意見である。もしこの時点でb,c人と判断された人(少数派)のみに意見を求めれば、また逆に自分達は普通人(a人)、他の人はちょつと変人(b,c人) と何のためらいもなく主張するだろうし、同じ全体の人々にまた別の事案(話題)にその判断を求めると全く別の構成になることは容易に想像できる。

ここで少し個人的な話をプラスしておけば、私自身と旧知の友ふたり計3人のある時の会話の一部である。

ある会話の切れ間での一言  X氏からY氏へ「やっぱりあんた 前から思ってたけど 変わってるなあ」。すかさず逆にY氏からX氏ヘ「あんたには言われとうないわ、わしはいたって普通やで! なあっ、、Z(私)さん?」。私はふたりに向かって「二人とも変わってますよ、いい勝負してる!」と言いたかったが必死で我慢 一瞬沈黙 そして思った、「このご両人 私のことはどう思っているのか・・・?  おそらくその答えは同じなのだろうと。

昔から「十人十色」の言葉があるが人間はそれぞれ感性 思考能力を持つがゆえ、そのTPO(時、場所、場合)に応じて本来の自分の意志を隠し多数派を装い 色を変え異色派を演じる不思議な能力を備えた厄介な生き物である。

即ち普通人(a人)、b人、c人 を自由に演じ分ける事ができるのである。

こう考えれば前述の、人間の生き方は三つのタイプに分けられる とする結論とは少し別の方向へと進んでいきそうだ。

それは もともと「普通人」などいない。もし居れば普通人 と言う隠れ蓑を羽織った言わば「十色人(といろじん)」の集団であるとも言える。

行方定まらず 結論出ずの普通論になってしまったが、このテーマ 結論を求めようとすること自体が意味のない また不可能な事なのかもしれない。

このところ連日 コロナワクチン接種関連ニユースが飛び交っている。

1、ワクチンを打った、打ちたい、打つべきだ を主張する人
約85パーセント

1、副反応、その他が不安で 打ちたくない を主張する人
約10パーセント

1、自分の体内に異物(ワクチン)接種は断固拒否 絶対打たないを主張する人
約5パーセント

この世界三様 のなか「普通人」、「十色人」は 今何処に居る?