阪神巨人どうま戦
テッちゃんと勝がけんかをしている。
3年生になって、新しい教室に入るなり、テッちゃんが、
「巨人の川上や」
と、けしょうまわしを机に広げたのがきっかけだ。勝が、
「なんや、これは」
と、けしょうまわしをひっぱがそうとした。紙でできている。ビリビリとやぶれた。
「何するんや」
「巨人はきらいや」
「きょねん、巨人は優勝した。強いんや」
「ことしはタイガースや」
「弱いくせに」
口げんかですまなくなった。
「タイガースと巨人、どっちが強いか、しょうぶや」
ふだんおとなしい勝が顔をまっ赤にしてテッちゃんにくみついた。
「勝、どうしたんやろ」
と勘太。
馬のりになってなぐりかかる勝に、武史もおどろいている。
「やめなさい」
イッ子せんせいのかんだかい声がとんできた。
さすがに勝も体をおこす。
タイガースと巨人、どちらがつよいかのけんかと聞いて、せんせいはあきれかえった。
テッちゃんは勝に馬のりされたのがよほど悔しかったのか、その日のべんきょうがおわると、
「馬でしょうぶを決めよう」
といいだした。
「馬?」
けげんな顔の勝に、
「どうまや」
どうまは馬とびのひとつ。かんじで書けば「胴馬」。
馬と乗り手の二つのグループに分かれる。馬グループの一人が壁をせにしてたつ。二人めからは次々に前にいる者のまたに頭をつっこむ。
乗り手は、一列につながった馬(どうま)に次々にとびのる。馬がくずれると乗り手グループの勝ち。はんたいに、乗り手のだれかが馬からおちると、馬グループの勝ちだ。
テッちゃんが「巨人組あつまれ」と声をあげると、4人が手をあげた。武史と裕三は巨人組にはいる。
タイガース組のリーダーはもちろん勝。勘太と隆三はタイガース組。
まずはジャンケン。テッちゃんが勝ち、タイガース組は馬、巨人組は乗り手になった。
勝がこうしゃの壁ぎわに立つと、テッちゃんは勘太に小声でいった。
「一番うしろになれ」
「なんでや?」
と勘太がふりかえると、テッちゃんは乗り手グループに何やら策をさずけている。
タイガース組のどうまができあがった。勘太はテッちゃんにいわれたとおり、一番うしろの馬だ。
乗り手のトップは武史。
一番乗りは一番前の馬まですすむのがじょうしき。二番乗りは二番目の馬までいく。ところが武史は勘太の背中の上ではらばいになってうごかない。
二番乗りの裕三は武史にのっかかって、うつぶせにくらいついている。
武史と裕三の重みがぐっと勘太の腰にかかる。とつぜんつけもの石が三つ背中にのせられた感じ。
三番乗りはテッちゃん。いきおいをつけてドーンと裕三のうえにとびのった。
勘太の足にガーンとしょうげきがはしる。ガクンとひざをついてしまった。
「勝った、勝った、」巨人が勝った」
テッちゃんはバンザイしておおはしゃぎ。
「ひきょうやないか」
勝はオニの顔になって、キッとテッちゃんをにらみつけている。